コミカライズ連載している「悪女が手懐けた獣」の韓国原作小説を読んだのでネタバレ感想を書いていきます。韓国語は不慣れなので翻訳が間違っていることもあります。
(間違っているところを見つけた場合はtwitterのDMでコッソリ教えてください…)
悪女が手懐けた獣(악녀가 길들인 짐승)
原作:Seol Young
ネタバレ記事一覧
1巻 | 2巻 前編 | 2巻 後編 |
3巻 前編 | 3巻 後編 | 4巻 前編 |
4巻 中編 | 4巻 後編 | まとめ |
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Chapter 9
翌日、ユナはオオカミの背に乗って移動しました。3番目の領域は森でした。
緑色の長髪を持つ美しい男がグレイン侯爵を歓迎しました。ウルフに対しては「なぜ12番目が下半身の緩い犬を連れてきたの?」と言ったので、3番目とウルフは仲が良くないようです。
ユナがグレイン侯爵の娘だと聞いて、3番目は驚きと恐怖が混ざった表情を浮かべたので、なぜそんなにも驚かれるのか、ユナにはわかりませんでした。
3番目は夢魔か悪魔の子供か聞くと、ウルフは「お前の鼻はゴミなのか」と悪口を言って、「人間の匂いがぷんぷんするだろう」と、ユナの首筋に鼻を近づけてクンクンと匂いを嗅ぎました。人間だと聞いた3番目はユナを指さして震えながら木の後ろに隠れました。
「あなた、人間嫌いではなかったですか?軽蔑していたと思うけど」
グレイン侯爵は答えませんでした。3番目との会話はその後少し続きましたが、「イリアナを長く黒野に置いてもいいことは無いのでもう行く」と言って先に進むことになりました。オオカミに乗って、目指している最初の領域に向かおうとすると、ウルフが「人間の匂いがする」と言いました。
ウルフがユナを抱えてオオカミから降りて地面に着地すると、ユナの背筋に悪寒が走りました。後ろを振り向くことも、ウルフの腕から降りることもできずにいると、「イリアナ・グレイン」と名前を呼ばれます。
ユナの恐怖に震えた表情を見たウルフが唸り声のようなため息をついて、「うちのチビに何の用だ、人間のくせに」と話しかけました。
「それは俺のものだから返してもらわないと。俺が狂ってあなたの四肢を全部切ってしまう前にこっちに来なさい、リナ」
「わあ、あれ俺よりもっと狂った犬みたいだ。 おい、12番目。 お前は自分の娘がぶるぶる震えているのに、なぜそこで様子見をしているんだ?」
グレイン侯爵は空から巨大な翼を広げたまま空中に佇んていて、ウルフの質問に「迷い中だ」と答えました。
「なぜ?殺すならいくらでも手伝うのに」
ユナがウルフから降りるとそばにシェリーが近寄り、ユナの呼吸は少し楽になりました。マグヌスは以前より少し痩せたように見えました。
良く眠れましたか、とマグヌスはユナに聞きました。
「俺は眠れませんでした。あなたのせいで気がすり減って、あなたに飼い慣らされた体は簡単に夜を許さなかった」
ユナにはマグヌスが焦っているように見えました。けれど、それをマグヌスは表には出さない。ウルフはマグヌスを指さして「言ったじゃないか」とユナに声をかけます。業の深い不幸な魂がユナに引かれて寄ってくるという話のようです。
グレイン侯爵はユナの前に立ち、翼を広げてユナを隠しました。
「足を踏み入れては行けないところに来たんですね、陛下」
「彼女を手に入れるためならできないことはない。彼女が俺の人生を台無しにしたにも関わらず、俺は彼女に全て与えると言っているのに」
グレイン侯爵の肩越しに、マグヌスがイライラしているのがユナに伝わりました。
「リナ、会いたかったです。出てきてください」
優しくて切ない声でした。それがユナを呼び寄せるための甘い嘘だと分かっていたけれど、ユナはマグヌスの前に行くしかなかった。マグヌスの手がこちらに伸びるのを見ながら、ユナは口を開きます。
「私は陛下の獣になるつもりはありません。もしそうなるなら…永遠にこの黒野を出ないか、自決します」
ユナの言葉を聞いてマグヌスの顔が固まりました。
「もし俺があきらめる気がないと言ったらどうしますか。 何とかあなたを捕まえて翼を折って逃げる足を折って俺のそばに置くと言ったら」
「自決をしますね」
「それさえも不可能にすると言ったら」
彼の言葉に私は静かに目を伏せた。 返す答えは一つだった。 長い間悩んでも、私は彼の動物になることも、彼のそばで息をして生きていくこともできない。
「それではお祝いを申し上げなければなりませんね」
彼の眉は大きく震えた。揺れ動く眉毛から彼の動揺がうかがえた。 私はわざと微笑んだ。
ユナは神殿に修行に入った時、もしかしたらマグヌスはイリアナ・グレインを忘れて自分の人生を歩んで行くのではないかと思っていました。そうして訪れる結末を、ユナは遠くから眺めるつもりでした。しかし、ユナの予想より執着が強かった。
「陛下は私の殻だけ持つことになりますね」
グレイン侯爵の視線を感じたが、ユナはグレイン侯爵も、ウルフもシェリーも今は何も気にしていませんでした。ただマグヌスだけを見ていました。
世界で1番高い席で望むものを与える、と言うマグヌスに「望んでいません」と答えます。ユナの願いは「帰りたい」だった。ここのように暖かくなくとも、自分としていられる世界に帰りたかった。
「帰りたいとはどういうことですか」
グレイン侯爵とウルフの視線を後頭部に感じました。マグヌスは捨てられるのはもう2度目だと言った。確かに、イリアナ・グレインはマグヌスを拾ってきただけで、捨ててはいないので、2回とも捨てたのは確かにユナでした。
「3回目にはあなたを殺すと決心しました。 殺して壊していっそ四肢を切って俺のそばに置いた方が良いと思ったけど……」
彼は自分がもっと痛い表情で顔をゆがめた。私は依然として彼をじっと見つめていた。
「なぜあなたがそんな泣きそうな表情をするんですか」
無表情な顔で眺めていると思ったら指摘されて驚いた。
しばらく黙っていたマグヌスは突然質問方法を変えて、ユナにどれくらいの間滞在し、どこに行くのか尋ねました。半年間は黒野にいる予定で、最初の領域を目指していると応えると、マグヌスは同行を申し出ました。
マグヌスはユナに近寄って手の甲にキスを落として微笑みます。
「これまできちんとした会話も、こんな時間を持ったことがない気がします」
マグヌスはそう言うけれど、ユナは対話なんてもう必要ないと思っていました。ここで別れればいいのに。しかし、ユナはマグヌスに愛ととても似ている感情を感じていたのを、もう認めていました。
マグヌスはこれまでイリアナが自分から逃げるのを恐れていた。だから、感情を整理すると言いました。自分の感情が単純な復讐心による執着かどうかを、同行することによって確かめるつもりのようです。
「夜は眠れましたか?」とマグヌスはもう一度聞きました。ユナが唇をかみ締めて視線を逸らすので、マグヌスはそれで答えを得て笑いました。
結局マグヌスは風狼の精鋭を連れてユナ達に同行することになりました。
Chapter 10
ウルフが連れていたオオカミに乗って移動することになりましたが、ユナの後ろにマグヌス、その後ろにフェルト(風狼の一人)という奇妙な乗り方になっていました。後ろに乗っているマグヌスは「元気でしたか?」とユナに尋ねました。
「なぜ何度も聞くのですか?私が元気でいないことを願っているんですか?」
「はい。あなたが俺のことを考えて眠れなかったことを願っていました。それは欲ですか?」
「私は皇后になるつもりもないし、陛下の獣になる気はもうありません」
「どうしてですか? 恋慕する人がいますか?」
「いいえ」
「決めておいた婚約でもありますか?」
「…いいえ?」
「ところでどうして機会も与えずに私には無条件にだめだと言うのですか?」
唇を耳元に近づけたままささやくおかげで耳元がかゆかった。
ユナは耳を塞いでマグヌスに「近い」と文句を言うけれど、「背中が狭いから仕方ない」と返されてしまいます。大きなオオカミのどこが狭いのか。
「あなたのぬくもりがないと眠れなかった」と話すマグヌスを見て、彼が作戦を変えたのだとイリアナは思いました。同情心を誘発する作戦なのかもしれない。
「相変わらずあなたを愛しています、イリアナ」
「あなたの愛は信じられません、陛下」
「信じるようになるでしょう、愛しています」
マグヌスがユナの耳元でまた囁きました。ユナは「お互いを台無しにしてしまうから私たちは会わない方がいい」と言うけれど、マグヌスは「お互いがそばにいれば満たされます」と主張しました。
ちなみにイリアナが乗るオオカミには、イリアナ+マグヌス+フェルトの3人ですが、ウルフの乗るオオカミには、ウルフ+3人の風狼の騎士たちの4人乗りになっていました。コミカルなシーンなので漫画で早く読みたいです。
領域の中心にたどり着くと大きな城壁が見えてきました。それぞれがオオカミから飛び降りるけど、そんなことがてきないユナは、マグヌスが抱きしめて降ろしてもらいました。
下ろす時は首筋に口づけをされ、降りてからは怪我がないか確認してあちこち気遣うマグヌスを見て、彼の本性を知らなかったらすっかり騙されてしまいそうだとユナは思いました。
グレイン侯爵は固く閉ざされた城門の前で「長く滞在するつもりは無いから開けなさい」と言ったけれど、「私の領域に人間を連れてくるなんていい度胸だ」と声が返事をして、空から稲妻のようなものが光ってグレイン侯爵とウルフの元に落ちました。ウルフは腕でそれを防いだけど腕から煙が上がっていて、グレイン侯爵も衣服が焦げていました。
ウルフが声に向かって「12番目の娘だ!」と言うと、城門が開きました。
「開いた!チビ、行こう」
ウルフが近づいてきユナに手を伸ばすけれど、マグヌスがユナを引っ張って抱きしめました。
「俺のです。手を触れないでください」
「この子が欲しければ壊すことなんて考えなければいいのに」
ウルフは忠告だけしてすぐに離れてグレイン侯爵の方にいきました。マグヌスもユナの手を握ってグレイン侯爵の後に続きますが、彼の表情はずっと明るくて、まるでユナとデートでもしているかのようでした。
城門をくぐるとそこはまた別世界でした。外は草ひとつない場所だったのに、城壁の中には村があって、そこには色々な種族が暮らしていました。グレイン侯爵と似た翼と角を持つ種族は悪魔で、夢を操れないかわりに魔法を使うのだとウルフが説明してくれます。悪魔たちはグレイン侯爵とウルフを見ると跪いて頭を下げました。
それを見るユナの複雑な表情を見て、マグヌスはイリアナが身分制度に乗り気ではないようだと指摘しました。確かに、別の世界の人間なので身分制度に対して、ユナには理解できません。
「慣れていないならゆっくり慣れればいい」とマグヌスは言いました。マグヌスもイリアナ・グレインもそれぞれ義務を持って生まれたので、どうしても人の上に立たなくてはならないから、ゆっくり慣れていけと言います。それは強制的でもなく優しい口調でした。
「リナ、俺はあなたのことが知りたいです」
「獣が嫌いだというあなたを、俺を捨てたあなたを、理解してみようと思います」
マグヌスは、獣になりたくないと言って自分を捨てたユナを理解するために、ユナが何が好きで何が嫌いなのか知りたいようです。
そこに、女性の声が響き、空中に大きな翼を広げた女性が降りてきました。女性は人間を連れてきたことを怒っていたし、ウルフを見て「下半身の緩いこの子をなぜ連れてきたの?」と聞きました。ウルフは王たちの間で虐められているのだろうかとユナは思いました。
女性はマグヌスに抱きしめられているユナの魂を見ました。
「これ、これがあなたの娘なの? 12番目」
「1番目、その子から離れろ」
「はぁ、12番目。この子、私に売りなさい。 欲しいものをあげるから」
「離れろと言ったはずだ」
二人のやりとりを聞いて緊張したユナにマグヌスは気づき、「大丈夫です。誰もあなたに傷1つつけることは出来ないから」と優しく囁きました。
1番目は「こんな魂初めて見る」とユナの魂を見てうっとりとしていました。ユナの頬に口づけをして、「食べてもいい?」と聞く1番目の願いをユナは拒絶しました。
ここで文中に「アンパンマンではないのだから、食べてはいけない」という表記があって面白かったです。
1番目はユナの頭を撫でようとしますが、マグヌスが後ろに下がったので1番目の手はユナの頭ではなく虚空を撫でることになりました。1番目の眉間にしわがより、不愉快そうな顔をしてマグヌスを見ました。
「何だこの真っ黒なものは。心が腐って完全に壊れる寸前だね。どうやって生きて歩いてるの?」
1番目は外見よりまず内面を見るようでした。しばらくマグヌスを見ていた1番目は突然「だからこの子に執着するのか」といって笑いだしました。
「前世に建てた業が多いうえに、今も業を築き、死臭と血なまぐさいにおいがぷんぷん漂う。お前の魂が腐り込む一歩手前だということだ」
「それで、それの何が問題なのか」
マグヌスの答えは堂々としていました。1番目は再びユナを見ると「夢を操ることはできるのか」「影は?」と聞いて、ユナがそれらをグレイン侯爵から習ったことを聞くと、「シドゥスの管理は君に任せる」と引き継ぎにユナを指名しました。
グレイン侯爵は自分の娘はまだ子供で、ここには見学させに来ただけだと話すが、1番目は聞き入れませんでした。
最近ではシドゥスの中心から出てくる獣が増え、周りの生命を食べ始めたとウルフが説明すると、グレイン侯爵の顔が硬くなり「そんな所に私の子供を入れるのか」と言いました。
1番目は前に自分の領域に入った人間をシドゥスに入れたが、その人間は生きて帰って来たと話しました。帰ってきた人間は、「霧のようで影でもある者にあったが、探していた者ではないと言われて返された」と話していたと1番目が言いました。
1番目はユナの魂を見て、ユナがグレイン侯爵の娘だとは信じていませんでした。魂の匂いが違うし、何より魂が綺麗すぎるからでした。1番目はユナが異邦人ではないかと思っていました。
「私の考えではシドゥスが探していたのはこの子だ」
マグヌスの顔は固まり、自分の知らない話をしている、とユナに言いました。ユナはこれまで多くのことを隠してきたけど、マグヌスとの関係を終わらせるにしても、やり直すにしても、ちゃんと話すことが大事だとマグヌス本人から言われてしまいました。ユナはその話には全面的に同意でしたが、しかしどこから話せばいいのかわかりませんでした。ここが小説の世界だなんてどうやって話せばいいのか。
「イリアナ!」
ユナが考え込んでいると、マグヌスがユナを抱きしめました。そして、ユナが気づく暇もなく突然現れた穴に二人は飲み込まれてしまいました。
穴に落ちていく中でマグヌスは「大丈夫です。目を閉じてしっかり捕まっていてください」とユナを安堵させるように言いました。しかし、暗闇が怖いのはマグヌスも同じだと気づいて、ユナもマグヌスを抱きしめました。
地面に着地すると、獣の腐った匂いと獣の唸り声が聞こえました。マグヌスには見えないようでしたが、夢魔だからなのか暗闇でもぼんやりと輪郭が見えるユナは、剣を抜くマグヌスに獣のいる方向を教え、教えられた通りの方角にマグヌスは動き、獣を切り倒しました。
戦いが終わると、マグヌスは「俺の名前をもう一度呼んでください」と言ってユナに口付けました。
「マグヌス」
「もう一度」
「マグヌス」
「もう一度」
「…マグヌス」
ずっと名前を呼んでいると変な気分になった。 彼は剣を鞘に押し込み、私をぎゅっと抱きしめた。
マグヌスは生まれてこれまで誰にも自分の名前を呼んでもらっていなかった。兄弟たちは呼んだが、それはマグヌスを苦しめるときだけだった。
名前を呼んだだけなのに幸せそうに笑うマグヌスを見て、ユナは罪悪感を感じました。
「あなたが俺を人間だと言って、俺が獣を辞めることになったその日から、俺の名前を呼んだのはあなただけです」
「あなたは俺を人間にしてくれる、唯一の人です」
「…私があなたの人生を台無しにしたのに」
「壊れた人生をあなたが新しい人生にしてくれただけです。それに、俺は前より今のあなたがもっと好きです」
「なぜですか?」
「…優しくなったからです」
優しいのはマグヌスの方だとユナは思いました。ユナがマグヌスの立場だったら、きっと殺したいと思うはずです。最も恨んでいるはずの人間をこうして生かして許しているマグヌスこそ、聖人君子だと思いました。
2人は手を繋いで出口を探すために歩き出しました。歩きながらユナはマグヌスに真実ゲームを提案しました。お互いが交互に真実を話すゲームで、普通はグラスを一気飲みするなどの罰ゲームがある、と説明すると、マグヌスは罰ゲームとして「キスはどうですか」と提案しました。
それはマグヌスにとって罰ゲームにならないのではと訝しむユナに、「元々虐められるのが楽しい性格をしているから、罰ゲームというものが特にない」とマグヌスは言いました。世間ではそれをマゾヒストというし、言い方を変えれば変態なのだとユナは思いました。
ユナは自分の罰ゲームはそれでいいけどマグヌスのは別にして、と言い、二人は話し合いの末に、マグヌスの罰ゲームは服を脱ぐことになりました。マグヌスの裸(筋肉)は見たいけど下半身まで見たいわけでは無かったユナは、「下着は除く」というルールを追加しました。追加のルールとして、言えることを言わないのは禁止にする、とユナが言いました。
そうして2人は歩きながら真実ゲームを開始しました。まずはマグヌスから始めることになり、ユナに「元気でしたか」と聞きました。
ユナは、元気に過ごそうとしたけど、マグヌスのぬくもりがないと眠れなかったし暗くなる夜が怖かったのでシェリーのぬくもりに頼って眠っていた、と答えました。
ユナはマグヌスに、自分を愛していると言うけれどそれは本心なのかと聞きました。マグヌスは「よくわかりません」と答えました。
「話すと心が楽になるし、リナが欲しいし、俺の視界にいてほしいし、足を折って閉じ込めたいけど…。その感情に1番似ているのが俺は愛だと判断しました。だから俺はあなたを愛しているのだと思います」
マグヌスは答えが終わると、ユナに「俺に会いたかったですか」と聞きました。
イリアナは答えられなかった。会いたかったのかどうか、自分でもわからなかったし確信が得られませんでした。ユナは罰ゲームとしてマグヌスに口づけをして、「どうして追いかけてきたのですか?」と聞きました。マグヌスはしばらく悩んだ末にジャケットを脱いで捨てました。高い服に未練はないようだった。
マグヌスは罰ゲームを終えると、なぜ自分を避けていたのか尋ねました。ユナは「怖かった。何の記憶もないから戸惑って逃げた」と話しました。ユナは自分が生きるためにマグヌスを置いて逃げたのだと話すと、マグヌスは「俺があなたを殺すと思いましたか?」と尋ねました。
ユナは自分が逆の立場なら相手を殺すだろうと思っていました。自分の人生を台無しにして、思い出せないと言って逃げたのだから。
「皇帝の名前をかけて言いますが、殺すと思ったことは1度もありません」
「死んだも同然の状況に立たせるつもりはありましたよね?」
「……」
おそらくなぜ追いかけてきたのかという質問に答えられなかったのと似たものではないか、とユナは思いました。
「答えはそれです。あなたが怖かったし、私の状況が怖かったし、ただ全てが嫌でした」
ユナは答え終わると、自分を皇后にして何がしたいのか聞きました。マグヌスはユナの手の甲に口づけをしてから、自分のそばに立たせたいと言いました。
「あなたに世の中を握らせて、天下を握らせて、俺を握らせて、二度と離れないように惑わせたいです。そうしてもだめなら、あなたを皇后という名前の下に閉じ込めておきます」
「それはまた別の意味で怖いです」
「皇后はどこにも自由はない存在です。あなたが皇后になるということは、あなたがどこに逃げても俺が正当に見つけられる権限を与えるられているということですから」
甘い言葉の下に現れた真心がとても真っ黒だ。
お互いに素直になると鳥肌が立つけれど、それでもユナの心は楽になりました。マグヌスは次の質問にはできるだけ答えて欲しい、と言って尋ねます。
「どこに帰りたいですか、イリアナ」
マグヌスはそれが世の中の天地にある小さな島でも、無人島でも、山里でも、どこであろうと征服して捧げる、とユナに言いました。
3巻後編を読んだ感想
ユナとマグヌスがゆっくり歩み寄る話でしたね。コミュニケーションの方法がわからないマグヌスにとって、この歩み寄りは大きな一歩になったでしょうし、ユナにとってもマグヌスが気になるけど怖いしそもそも自分はイリアナじゃないというモヤモヤした気持ちが少し整理されるのでは、と思いました。
ちゃんと二人が恋愛に向けて動き出しているので、読み手としては心底安心しました。
4巻完結のため、あと2〜3記事で完走します。
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