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原作ネタバレ

「悪女が手懐けた獣」韓国の原作小説ネタバレ感想 |3巻・前編

コミカライズ連載している「悪女が手懐けた獣」の韓国原作小説を読んだのでネタバレ感想を書いていきます。韓国語は不慣れなので翻訳が間違っていることもあります。

(間違っているところを見つけた場合はtwitterのDMでコッソリ教えてください…)

悪女が手懐けた獣(악녀가 길들인 짐승)

原作:Seol Young

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Chapter 7

マグヌスはイリアナの視界を元に戻しましたが、イリアナは怯えきっていて、視線が合いませんでした。最近のイリアナはマグヌスが笑ってみせると困ったように頬を赤くしていたので、笑顔を作って見せましたが、それでも反応がありません。

マグヌスはイリアナに宝石や名誉を全て与えるからそばにいることを約束させようとしました。約束するなら、これ以上壊さない。イリアナはしばらく反応も見せませんでしたが、やがて「そうします」と答えました。感情は全く感じられなかったけど、それでもマグヌスは安心しました。そうして深い眠りに落ちて再び目を覚ますと、マグヌスのそばにイリアナはいませんでした。

自分が笑えばイリアナ(ユナ)はこれまで照れた様子を見せていたから、同じように笑顔を見せたのでしょうけど…既に怯えている相手には効果がないことが、マグヌスにはわからないのでしょうね。誰か教えてあげて…!

マグヌスが眠った時、ユナは鬼火のような青い炎を見ました。そして、そこから現れたのはグレイン侯爵でした。グレイン侯爵はマグヌスを見て「今夜は起きないだろう」と言いました。そうして、グレイン侯爵は娘であるイリアナ・グレインについて話し始めました。

グレイン侯爵は人間ではなく、夢魔でした。イリアナ・グレインは自分の父親が人間でないことを知ると、こんな血は必要ないと言って自分を傷つけました。グレイン侯爵はそれを叱って、もうさせないために厳しく教育しましたが、イリアナとの仲は悪くなるばかりでした。

グレイン侯爵は仕方なく夢魔としての力を解放させるためにイリアナを暗闇に閉じ込めました。暗闇が夢魔の力を解放させる鍵だったから、力を感じれば何かを悟るかと思っていました。しかしイリアナは暗闇に恐怖してしまいました。

恐怖で壊れたイリアナはマグヌスを拾ってきましたが、自分が夢魔の血を持つためにマグヌスと結ばれないことに嘆き、父親を恨み、殺そうと画策することになりました。しかし、その結果、消えてしまったのはイリアナ自身でした。

そこまで聞いて、ユナが一歩下がると、グレイン侯爵の首が傾きます。

「助けてくれと言わなかったか。異邦人に関しては私もよく知っている」

グレイン侯爵は自分がイリアナ・グレインではなく、他の世界から来た異邦人だということを知っていました。初めから見当はつけていたのものの、確信したのは自分に助けを求めた時だと明かしました。魂の色が違う、と。

グレイン侯爵にとって、子供は妻のアクイラが望んだから作ったもので、夢魔は本来子供に意味を持ちません。だから、魂の色が違ってもイリアナ・グレインの肉体を持っているなら、自分とアクイラの子供だと判断していました。

夢魔は子供の時に能力をあまり使うと魂が迷ってしまうので、グレイン侯爵は自分の娘に忠告していました。けれどイリアナはそれを聞かなかったし、マグヌスの精神に干渉しようとして、やりすぎて迷ってしまったようでした。そこへユナが入ったのです。

道に迷った魂を連れ戻すことはできないし、その体を持っている限りは娘なので、自分の母親に敬意を払えばいいとグレイン侯爵は言いました。

グレイン侯爵にとって、大切なのは侯爵夫人であるアクイラです。

「むしろ君の方が人間の子供を持ったように思える」

考え方があまりにも違いましたが、それでも助けて欲しいなら手を取れというグレイン侯爵の手を、ユナは取るしかありません。真っ黒な暗闇に引っ張られ、ユナは恐怖しました。しかし、グレイン侯爵は「私たちにとって夜は世界であり故郷だから溶け込まなくてはいけない」と教えました。

そこへ闇の精霊が現れ、ユナを引き止めます。

「この子は我が子だ」

グレイン侯爵の言葉を聞いた闇の精霊は体を変化させ、青年の姿になりました。

「これは人間の血筋だよ。つまりお前と人間が子供を作ったということだが…それは禁忌じゃないか?」

暗黙のルールがあり、人間と縁を結ぶことはタブー視されていると闇の精霊は言いました。

「人間と縁を結ぶために領域を捨てた王がいると聞いたけど、お前だったんだ、12番目。それで黒が不安定になった。バランスが崩れると良くないのは知っているか?お前のわがままで他の王たちが苦労している」

「余計なお世話だ」

良心があるなら行っては行けない、と闇の精霊はユナに忠告しますが、ユナには留まるという選択肢はありません。

「彼に獣になる気は少しもないと伝えて」

ユナはマグヌスに嘘をついて逃げるのできっと許されない。けど、イリアナ・グレインのように両手を広げて小屋に監禁されたくもありませんでした。

マグヌスと精霊と、グレイン侯爵とユナのいる世界を繋ぐ通路が狭くなり、やがて消ええ、周囲には夜が沈んでいました。

「目を開けろ。闇の精霊と私たちの夜は違う」

グレイン侯爵がゆっくりと歩き出すと目の前が少しづつ明るくなりました。

「彼らの暗黒は恐怖のためだが、私たちの夜は美しい」

暗闇の中には星がたくさんありました。宇宙の真ん中に立っていて、手を伸ばせば星に届きそうで、とても美しい光景でした。

「この通路に長くいると夜に馴染んだ私達もまた魅了される。道に迷わないよう私たちも行こう」

歩きながらユナは自分の話をしました。王もいなくて、貴族もいない。そこで暮らし、早くに両親を失って独り立ちして恋愛をしたけれど、恋人は詐欺師だったこと。眠った時に確かガス爆発が起こったので恐らく自分は死んでしまっていること。

でも、死んでいたとしても、辛うじて生きていたとしても、ユナは自分の世界に帰りたかった。そして、ユナが帰ったらちゃんとイリアナ・グレインを見つけ出してちゃんと会話をした方がいい。そんなことを話したけれど、グレイン侯爵は迷った魂を見つける可能性はゼロに近いし、君がイリアナ・グレインとして生きろと言いました。

グレイン侯爵はユナを次の侯爵を立てたら、自分が抜けた暗黒に戻ってバランスを保つ必要があると言いました。グレイン侯爵の正体は、黒野を守る13人の王の一人で、王の誰かが欠けると暗黒地帯が広がるとユナに教えます。

「だから後継者になる以外は自由にしていい。皇帝のそばに居たいなら獣ではなく臣下として対峙しなさい」

ユナはグレイン侯爵の娘として生きることを受け入れ、グレイン侯爵をお父さんと呼びます。

「叱るのは言いけど叩いたり閉じ込めたりしないで」と言うと、グレイン侯爵もそれを受け入れました。そして、たまにでいいので本来の自分の名前を呼んで欲しい、と言いました。そうしてグレイン侯爵家の領地にある邸宅に道が迫った時に、ユナは質問をします。

もし、イリアナが皇帝を差し向けて滅ぼしに来たとしたら。侯爵夫人を殺して、自分も殺されるとしたら、それはなぜですか?と聞きました。それはユナの知っている小説の展開でした。けれど、ユナはグレイン侯爵が妻を殺すような人ではないと今では確信していました。

グレイン侯爵は、もし自分がアクイラを殺したのだとすれば、そのように見える夢を見せただけだと話します。イリアナが望んだから、それを見せたにすぎない、と。

グレイン侯爵は穴に入っていき、ユナも続くと、すぐに抱きしめられます。ユナを抱きしめたのはグレイン侯爵夫人のアクイラでした。

天気が悪いのに外で待っていたアクイラをグレイン侯爵が注意しますが、アクイラはすぐに手折れてしまいそうな花のような外見でありながら「神殿を爆破してといったのに!」とグレイン侯爵に怒り返しました。

娘を傷つけた神殿を爆破させるようグレイン侯爵に頼んでいたようです。制裁を与えたけど爆破はしていない、とグレイン侯爵が言いました。

アクイラはユナを食事に誘い、記憶喪失だという娘を引っ張って邸宅に入りました。そこはユナがいたグレイン侯爵家の冷たい雰囲気とは違っていました。飾られた絵のひとつですら、アクイラのために選ばれたものでした。

イリアナ・グレインはマグヌスと結ばれない理由である自分の血が嫌で、その大元である父親を殺したかったのでしょうね。だからこそマグヌスが逃げれるように用意していたのでしょう。自分が最終的にマグヌスに殺されたとしても、イリアナにとっては満足だったかもしれません。

※結ばれない理由は後述します。

イリアナが逃げたことに気づいたマグヌスは部屋で暴れていました。イリアナのことになると子供のように振る舞う皇帝を見て、フェルトは「また連れ戻せばいいです」と言います。闇の精霊が「黒の12番目が来たのだから自分も彼らには止められない」と弁解しました。

マグヌスはグレイン侯爵家を反逆罪の罪で問おうか考えますが、しかしそうすると、もうイリアナは永遠に自分の皇后にも側室にもなれません。自分の足元に座り込んで愛を受け入れるだけの存在となり、徐々に壊れてしまうでしょう。そうなったら楽しいだろうか、とマグヌスは考えました。

闇の精霊がイリアナからの伝言を伝えるとマグヌスは笑いました。イリアナは自分と同じところまで落ちる気がないのだとマグヌスは思いました。

黒とは何かとフェルトが闇の精霊に聞くと、人間が黒野と呼ぶ暗黒地帯にいる者達で、グレイン侯爵はその13人いる王の中の一人で、夢魔の王だと話しました。彼らを制御するには黒にある特別な鉱石が必要だと闇の精霊は言いました。

マグヌスはここでイリアナが夢魔と人間のハーフだから自分の夢を操れたことを理解しました。

ユナが部屋の扉を開けるとアクイラがいました。部屋に入ることを遠慮して待っていたようです。ユナは「これからは入って起こしてください」と言いました。

2人で朝食をとるために廊下を歩いていると、アクイラは「夢のようだ」と言います。

「あなたも聞いたと思うけど、ベリーは珍しい種族でしょ?あなたはそれが恨めしかったみたいだったから」

ベリーという愛称にユナが思わず笑ってしまうとアクイラも笑いました。侯爵夫人はイリアナ・グレインを愛していたようなのでユナは罪悪感を感じました。

アクイラは簡単な考えでグレイン侯爵を選んだわけではなかった。彼がそれだけアクイラに最善を尽くし、アクイラもこの人なら自分の人生を任せられると判断したから種族が違っても結婚した。しかし、それをイリアナは受け入れられなかったのだと話しました。

なぜ受け入れられなかったのかと聞くと、「あなたが好きな人が皇子だったから」と答えました。王族の伴侶になったからには子供を産まなくてはいけないけど、イリアナが産む子供は人間ではありません。

ユナは理解しました。愛のためにイリアナ・グレインは多くのものを失った。愛した人と結ばれないことを嘆き、家族を恨んだ。全ての事情がわかると、イリアナ・グレインの幼さをユナは感じました。

爵位を得たいなら勉強して、黒野に行きたいならベリーについて行きなさい、とアクイラは言いました。爵位を得るということはマグヌスと向かい合うこと、黒野に行くならマグヌスから逃げるということです。

「リナ、まだ皇子が好きなの?」

「よくわかりません。 記憶を失ってからは、この気持ちが本物なのか偽物なのかもしれません」

イリアナ・グレンが残した感情の残滓なのか、本当に彼に一目惚れしたのか、それとも彼が本当に好きだったのか分からない。

この場に私が存在しないようで。 それで心臓が痛かった。

アクイラは時間が経てばわかると言いました。記憶の残滓なら忘れるし、本物なら胸に残るだろうと言います

「だからゆっくりまた訪ねてきなさい。あなたの選択なら私もベリーも支持するでしょう」

アクイラの言葉がユナにとって心強かった。イリアナ・グレインの選択ではなく、自分の好きなように選択してよいという話だったから。

グレイン侯爵は皇城に用があるといって朝早く出立していました。ある程度距離があるはずなのに夢魔の道を使えば1時間程度で首都についてしまうのだから便利な能力だとユナは思いました。

マグヌスは今頃自分の事で怒り狂っているでしょう。もしかしたら、殺すと言って探しているのかもしれない。しかし、数日くらいは余裕があるはずなので、ユナは休むことにしました。未来のことを考えるために、ユナにはゆっくり休む時間が必要でした。

Chapter 8

それからユナは3日間、領地で過ごしました。アクイラは本当に慎重でした。ユナの表情ひとつひとつを見て、助言はするけど必要以上の干渉はしてきません。それがユナには有難かった。

ユナはグレイン侯爵と一緒に黒野に行ってみることにしました。マグヌスからは何の接触もないれど、マグヌスにもユナにも少し距離をあける時間が必要だと考えました。

夜はマグヌスの温もりがなくて眠れなかったユナが、グレイン侯爵に大きな犬が欲しいと言うと、グレイン侯爵は黒野の黒いライオンをユナに与えました。てっきりメスだと思ってシェリーと名付けたのに、実はオスだったのをあとから知りました。

シェリーはグレイン侯爵と同じように上品で優雅で、気難しかった。新鮮な餌しか食べてくれません。しかし、シェリーを抱くことで、少し不眠が解消されました。

ユナは徐々にイリアナ・グレインのカリスマ性やオーラが消えて自分自身になっていったけど、グレイン侯爵もアクイラも非難しなかったし、むしろアクイラは喜んでユナをショッピングやカフェに連れ出しました。自分自身は両親を亡くしているので、ユナはこの関係が嫌いではありませんでした。

グレイン侯爵とは1週間に1度ずつしか会わないけど、皇城で何があったのか聞いても絶対に答えてくれませんでした。

ユナはラファエルの夢の糸を見つけてラファエルに会いに行きますが、ラファエルはあまり内情を知らないようでした。ただ1度マグヌスに呼び出されて、茶菓子を渡されてラファエルが関わる武器の話をしたと言います。

ラファエルが武器を発明する天才少年という設定だったと思いますが、ストーリーには全く関係ないので割愛しています。叔父さんと仲が悪いのは、そのラファエルの才能から生まれる資産を、叔父さんが狙っているためです。

ユナは自分の夢を扱う能力の使い方を学びました。影も使えるようになったし、他人に夢を見させる方法や、夢を引き出して現実として具現化することもできるようになりました。

誰もいない時やシェリーといる時は、元の世界を持ち出したりしてみました。恋しくて懐かしい世界。それが本来の自分だとユナは忘れないようにしました。もうひとつ良い点は、夢を現実に持ってくれば、夢で作った食べ物も実際に食べることが出来たことでした。

グレイン侯爵は休暇申請をして領地に帰ってきたと思ったら、ユナを連れて今夜黒野に出発すると言いました。そして、黒野に行ったらユナに爵位を譲ると宣言します。

グレイン侯爵は2人の時は自分のことをユナと呼んでくれました。

グレイン侯爵は元々この爵位はアクイラのものだったと話します。しかし、当時は女が爵位を継ぐことができないので自分がグレイン侯爵となりました。グレイン侯爵家の仕事は、これまで実はアクイラが全て行い、グレイン侯爵自身は妻が用意した資料と彼女が用意した言葉を話しただけでした。

アクイラの働きかけで今は女が爵位や仕事に就けるようになった、と話してグレイン侯爵は優しく笑いました。それは見る人全てが魅了されるような笑顔で、父嫌ではなかったら危ないよ思うほど。きっと牛や犬も魅了してしまうだろうとユナは思いました。

黒野に立つ時、アクイラはユナとの別れを惜しみ、「危険な魔獣に気をつけて」と心配しました。グレイン侯爵は「心配しすぎた」と言いながらも「無事に連れ帰る」とアクイラに約束しました。

「それでも心配は心配なの。あなたも無事に帰ってきて」

「もちろん。君の思う通りになるだろう」

グレイン侯爵は笑ってアクイラの手の甲に口付けると、アクイラも笑って手を伸ばし、グレイン侯爵の整った髪を乱しました。

「私が望むのは、あなたと私の子供が無事に帰ってくることよ。 分かった?」

「ああ、心配しないで。早く処理してくるから」

「あなたは無理して。 仕事を投げ捨てた王だからちょっと無理して早く帰ってきて」

侯爵夫人はやはり残念ではあるようで未練がぽつりぽつりと残った声で話した。 豪快で強く見えるような彼女が弱い姿を見せるのが少し不思議だった。

全部で6箇所あるうちの、最も帝国から近い黒野への入口に、マグヌスはフェルトに案内されてやってきていました。

闇の精霊であるノックスに黒野の中心まで案内させます。魔獣の声が聞こえますが、マグヌスは先に襲って来ない限りは攻撃しないつもりでした。歩きながらノックスは「1番目は悪魔の王で、侵入者や異邦人を嫌っている」と説明し、自分たちが向かっているのは比較的穏やかな3番目の妖精の王の領域だと話しました。

風狼が望むのは、広がる黒野の調査と、魔獣を倒してその拡大を抑えることでしたが、マグヌスは黒野にある夢魔を防ぐ特殊な鉱石と、イリアナが逃げるかもしれない場所をあらかじめ見ておきたいからという理由でした。

そんなマグヌスの鼻に、うっすらと嗅ぎ慣れた石鹸の匂いがしました。

夢魔を防ぐ鉱石なんて手に入れてしまったら余計に二人の関係が悪くなる気がするのですが…せめて行動に出る前にシェリルに相談するとかすればもっと上手くいくのにな、と思います。(相談なんてする性格じゃなさそうだけど)

ユナは黒野に浮かぶ3つの色が違う月を見て「ここはどこですか?」と聞きました。目の前に広がっているのは月だけではありません。そこには獣の歓楽街がひろがっていて、獣たちのエサや首輪が売られ、獣たちがそれぞれ話をしていました。

「7番目の領域だ。獣の王だよ。乱交が好きで男女を選ばないたちの悪い奴だから、もし見ても目を合わせるな」

ユナはそばにいるシェリーを引き寄せます。

「シェリー、あんな獣のところに行ったら大人しいシェリーは食べられてしまうから絶対に行ってはだめ。わかった?」

「私は君を守るからどこにも行かない。ここは私たちの故郷だから」

話すシェリーを前にして、ユナはこれまでシェリーに言ったこと、したことが走馬灯のように駆け巡りました。寂しいと抱きしめて眠ったし、憂鬱で帰りたいとも話しました。まさかここまで知性あるライオンだとは思っていなかったのです。

黒野は実は中心部分の名前で、3つに別れていることをグレイン侯爵は説明しました。1つ目のニグロールは1番外側で荒野しかない何も無い場所。2つ目が今このように生命体が生きる領域の黒野。黒野は13の領域に別れて人間以外の多くの種族がいます。そして中心にシドゥスと呼ぶ巨大な暗黒があります。各領域の王はシドゥスを制御して黒野が広がらないようにする役目を持っていました。

「ところがどこかに住む夢魔の子が人間に惚れて仕事を全て放り出してしまった」

グレイン侯爵のそばに、オオカミを2匹つれた赤い長髪の男が立っていました。グレイン侯爵は不快感を表に出しながらも「久しぶりだ」と挨拶をします。男は7番目の王でした。

7番目はユナを見て「どこから半端者を拾ってきたんだ?」と言いますが、グレイン侯爵は相手にしませんでした。7番目は更に下品な言葉を投げてユナに手を伸ばそうとすると、それよりも早くグレイン侯爵が7番目の手を掴みました。

捕食者のような7番目の瞳に脅えたユナがグレイン侯爵の服の裾を掴んで「お父さん」と呼びかけると、7番目が驚きました。グレイン侯爵が人間の女に惚れ込んで黒野を出たことは知っていても、まさかその人間との間に子供が出来ているとは思っていなかったようです。

グレイン侯爵が「これから半年間シドゥスを引き受ける」と話すと、7番目は自分が腰掛けたオオカミとは別のオオカミをユナのそばに寄らせます。オオカミは人ほど大きかったけど、それでもユナの掌に額を擦り付ける姿は可愛くて、柔らかかった。気づけばオオカミを両手で撫で回していたユナは、グレイン侯爵が複雑そうな顔をしていることに気づきましたが、ユナは諦めてオオカミの毛に顔を埋めました。

「かわいいね。俺は7番目。獣の王だ。ここは獣の国であり、同時に欲望の国でもある」

グレイン侯爵が「もう行こう」と言うますが、ユナはオオカミに乗ってみたい欲が出ていました。それに気づいた7番目が、乗る代わりに願いとして、ユナたちに同行させて欲しいと言いました。

7番目が口笛を吹くとオオカミがユナを持ち上げてそのまま背に乗せます。7番目の願いはグレイン侯爵とユナに同行することなので、人間の足では遅いしそれに乗っていけばいい、と言いました。しかし、グレイン侯爵が「いい加減にしろ」と拒絶します。

「7番目は欲望の主。相手の持つ欲望を刺激して肥大化する」

シェリーが不快そうな顔をしていたのでユナはオオカミから降りてシェリーに引っ張られるのに従いました。ユナが黙って歩き出すと、7番目も仕方なくオオカミから降りてユナの後ろを歩きました。

そうして同行することになった7番目に、ユナは名前は無いのか聞いてみましたが、グレイン侯爵も自分の名前は黒野を出てから自分でつけたものだと話しました。7番目はユナに名前をつけて欲しいと言いますが、ユナの命名センスは壊滅的で、シェリーでさえ最初は黒頭巾とかにしようとしていたのを、見かねたグレイン侯爵が本に登場する人間の名前をつけたらどうかと言うのでシェリーとなったほどでした。

赤い髪とオオカミで「レッド」か「ウルフ」しか思い浮かばなかったユナはウルフでどうかと提案し、そのまま受け入れた7番目は苗字もねだったので、ウルフ・レッドになりました。語感が悪くない、と言ってウルフは満足しているようでした。

どこに行くのかとウルフがグレイン侯爵に聞くと、最初の領域である3番目の元だと話しました。3番目はウルフとは仲が悪いけど、グレイン侯爵とは仲が良いようです。

ウルフはユナと話しては「子供もいい。作らないけど」などと話しました。ウルフは大袈裟にため息をついて「いいな、俺もこんな子が欲しい。もうひとつ産む気はないの?俺がよく育てるのに」と言うのでグレイン侯爵の態度はさらに冷たいものになりました。

魔獣は襲ってこず、むしろ人の声がすると離れていきました。ユナが歩き続けて限界が来ると、グレイン侯爵がユナを抱き上げてくれました。ウルフは「まだそんなに歩いていないのに」と言うので、王たちとユナでは体力が違うようです。

グレイン侯爵はユナを座らせて夢から食べ物を作って現実に持ってきます。食べろという事なのでしょうが、ユナはそれらを食べてもお腹を満たすことは出来ないのを知っていました。味はするのでユナも元の世界の食べ物を作り出したりもするけど、あくまでも夢で作り出したものなので腹は満たされません。

しかしここには木はあるのに果物は存在しませんでした。仕方なく魔獣の肉を食べることになり、ウルフが狩りに出ていきました。

ユナはグレイン侯爵になぜ黒野に連れてきたのか聞くと、 「君が見て聞いて学ぶことを願ったからだ。君が望むなら、君はグレイン侯爵になるかもしれないし、ここで君が望むように生きるかもしれない」と言いました。

グレイン侯爵はユナに選択肢を与えていました。しかし、なぜユナはここまでグレイン侯爵が良くしてくれるのか理解できませんでした。イリアナ・グレインは本当はもういません。魂のない殻でも十分と言うけど、それでもイリアナ・グレインに愛着がなかった訳でもないはず。グレイン侯爵な娘を大事にしていたのは、邸宅の書斎な育児本で溢れていたことから、ユナは理解していました。

グレイン侯爵に理由を尋ねると、「それもまたあの子が望んでいたものだから」と言いました。自ら肉体を無くしてしまったとしても、それもまたイリアナ・グレインが望んだことなのでグレイン侯爵はその選択を受け入れていました。しかし、アクイラに話すことはできなかったので、ユナという代打を立てることにしたのでしょう。

ウルフが大きなイノシシに似た魔獣を抱えて戻ってきました。ウルフ自身も血まみれで、グレイン侯爵とまた険悪な雰囲気なっていたので、ユナはウルフを湖畔に連れて来ました。ウルフはそのままユナに強引に迫ってきますが、自分がグレイン侯爵の本当の娘では無いと話すと興味がそちらに流れました。

自分は別の世界の人間で、イリアナ・グレインの魂が迷って空になっているところに、自分の魂が入ったのだと話しました。

ウルフはユナを抱きしめて膝に座らせました。少し戸惑う体勢だったけど、ウルフは何も考えずに行動していたようで、「それは凄く珍しいケースだ。普通、魂はさすらいながら消滅するから」と話を続けていました。

ユナが「もともとこんなに美しくない」と話すと、ウルフは「体もそうだが魂が美しい」と言いました。何世代に1度会えると運が良いくらいの珍しい魂をしていると言います。

だけど、それくらい運の良い魂ならなぜ恋人が詐欺師だなんてことがあるのだろうか。不思議に思ったユナが、自分の恋人だと思っていたらその男は詐欺師で、彼には別に彼女がいたことを話します。ウルフは話を聞いて、詐欺師の人生がそれまで上手くいっていたなら、それはユナのおかげだと言いました。なので、ユナが離れれば全部おかしくなるだろう、と。別れた後に連絡が来なかったかウルフに聞かれて、ユナは心当たりがありました。

「不幸な魂はお前に導かれるようになっている。お前がいれば息ができるような気がするから」

不幸な魂と言われて、マグヌスが思い浮かびました。

「前世の業や、業を持って生まれた人、不幸な人はお前に本能的に惹かれるしかない」

そう話しながらウルフは忠告もしました。

「彼らは基本的に欲望が強い。お前を殺してお前の魂を汚したくなるかもしれない。綺麗なものは汚したくなるし、そうしてこそ自分が手に入れれたと思うから」

ウルフはユナを抱き上げて歩き出します。どうやらグレイン侯爵のところに戻るようでした。ユナはそれほど魂が綺麗なのになぜ本人は幸せでは無いのかと聞いてみました。

「周りに配るから本人に幸せが落ちてこないんじゃないか」

グレイン侯爵の元に戻ると、イノシシのような魔獣はすっかり調理されて美味しそうなステーキとなっていました。とても美味しくて、ユナはグレイン侯爵が料理の腕が良いことを知りました。

ちなみにウルフにはそのイノシシの骨だけ与えられました。扱いの差…!

食事するユナの前で、ウルフはグレインに「娘をくれ」と言います。魂が珍しいほど綺麗なので、外に出たら長生きできないから保護した方が良いと言いました。それに1番目が見たら黙っていない、と。

グレイン侯爵は全ての選択は娘自身がするのでお前が気にすることでは無いと返しました。

3巻前編を読んだ感想

グレイン侯爵とアクイラの二人が好きすぎて、親世代の話が読みたいです…

人間嫌いのはずの夢魔がアクイラに惚れて、彼女のために自分の領地も責任も全部放り出すとか最高オブ最高。大きな壁を乗り越えて結ばれた二人が子供を授かったけど、子育てがうまくいかなくて子供に嫌われた末になんとか和解したよー!ってハートフルストーリーでいいじゃんって思いました。

というか外伝とかで二人の話が読みたいくらい、本当にグレイン侯爵とアクイラが好きなんです。

(でもマグヌスも放っておけないし気になる)

次回の更新は来週を予定しています。更新はtwitterにてお知らせします!

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いり
異性愛・同性愛に関係なく読みふけるうちに気づいたら国内だけではなく韓国や中国作品にまで手を出すようになっていました。カップルは世界を救う。ハッピーエンド大好きなのでそういった作品を紹介しています。

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