コミカライズ連載している「悪女が手懐けた獣」の韓国原作小説を読んだのでネタバレ感想を書いていきます。韓国語は不慣れなので翻訳が間違っていることもあります。
(間違っているところを見つけた場合はtwitterのDMでコッソリ教えてください…)
悪女が手懐けた獣(악녀가 길들인 짐승)
原作:Seol Young
ネタバレ記事一覧
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3巻 前編 | 3巻 後編 | 4巻 前編 |
4巻 中編 | 4巻 後編 | まとめ |
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Chapter 6
飼っていた人と放した人
部屋にやってきたシェリルとカシオと共に食事をしながら、ユナはマグヌスとのことを相談しました。彼に悪いことをしたのは知っているけど、なぜその彼が自分を皇后にするのかがわからない、と。
シェリルは「2人はもう少し素直になった方がいい」と言います。
シェリルはマグヌスと出会った時、血統の良い野生馬のようだったと話しました。人間不信であるのに、食べ物や選ぶものの好みが全て高価だったから。それは、マグヌスを連れていた人がとても大切にしてくれたのだと思ったとシェリルは言いました。
解毒もほとんどしていなくて、シェリルはたまに訪れる禁断症状を助けることくらいでした。そう言われて、自分の判断がもしかしたら結果を変えたのかもしれないとユナは思いました。解毒はイリアナ・グレインではなく、ユナがしたことだったから。
シェリルは飼っていた人と放した人が同じ人だと思っていなかったと話します。飼っていた人は、マグヌスの外見や衣服、仕草を見てわかる通り、綺麗な宝石をそのまま綺麗にしておきたいというのが感じられた。中身は汚れていても、外が整っていればいい。
逆に放した人は人間らしい言動や行動を教え、宝石ではなく人間として放そうと努力していたのがわかった。それは、マグヌスの行動や言動が示していたし、何より彼の髪質が他より手入れされていなかったから。
ユナはマグヌスの髪の手入れを考えてはいませんでした。ただ、解毒して獣ではなくお前は人だと教えて解放しました。それをまさか理解してくれる人がいるとは思っていなくて、ユナは泣きそうになりました。
マグヌスの例外
マグヌスはシェリルに言いました。
これまで自分が優しさだと思っていたものは、実は優しさでなく恐怖心からなる錯覚で、温もりだったと思っていたのは別の感情だった。それを、優しい人に会って悟った、と。
だから、その人を自分と同じ姿にするのだとマグヌスはシェリルに言いました。自分が獣で彼女が人にしたので、今度は彼女が獣でなくてはならない。それは復讐かと尋ねると「そうだ」とマグヌスは言いました。
けれど、シェリルはそれは復讐ではなく、もう少し欲望に忠実な、人間の本能に近い感情ではないかと思いました。
マグヌスはイリアナ・グレインと人間と獣の関係しか築いたことがない。だからそのままの方法を使うことしかできない。
シェリルやカシオの手さえもマグヌスは嫌がるのだと言いました。シェリルは治療をしてきたのである程度は耐えられるけど、それでもそれは「耐えられる」でした。
「あなただけが例外です。あなたはマグヌスの例外です、イリアナ」
シェリルはその関係を、復讐と呼ぶのか主従関係と呼ぶのか、なんと呼ぶのか分かりませんでした。シェリルはマグヌスは精神的に問題を抱えていますが、マグヌスはまともなふりをするのがとても上手でした。
不眠症で食事も拒絶し、絶え間ない悪夢にさ迷って数日間目が覚めなかったこともある。皮膚接触を極度に嫌って、触れるとなんの症状もないのにアレルギーでも出たかのように体をかいたりもします。
「あなたたちのやり方で例えると…獣を人間にしたじゃないですか。それがマグヌスにとっては新しい世界だったんです」
「マグヌスがイリアナを無理やりここに連れてきて以来、私は彼に特別な薬を処方をしなかったし、マグヌスが相談を受けに来ることもなかったです。」
「それは…」
「マグヌスにとってはあなたが安定剤で、あなたが答えでした。イリアナがいなければ生活できません」
「シェリル、いくらなんでも私は彼の復讐の犠牲になることはできません。彼は私を愛さずここに居座らせようとするけど私は…….」
私はそうしなければならない理由がなかった。現実を最後まで否定しようとしているわけではないが、犯さなかった罪で私が罰を受けたくなかった。
マグヌスが自分を愛することがないのをユナは知っていました。小説でマグヌスの隣にいたのはシェリルだからです。その結末を知っているのに、なぜマグヌスの愛が偽りでは無いと思うことができるのでしょう。
腐って歪んだ自分たちの関係が甘くなることなどないとユナは思いました。
マグヌスはユナに持っている感情は復讐心だけでは無いけど、それは依存でした。ユナがマグヌスに傷を与えたとすれば、それは傷跡となってしこりとして残る。しかし、その傷を与えた者自身がそばに居ることが、果たしてマグヌスにとって何の価値になるのか。いっそいなくなった方が良いのだとユナは思っていました。
愛らしい獣
シェリルとの会話を考えて、ユナはマグヌスと馬車に乗りました。マグヌスを見ると、確かに侍従や侍女と接触を避けているように見えました。
向かい合わせに座った馬車の中で、マグヌスはユナがどこかさっぱりしている様子だと指摘します。ユナはそれに驚きながらも、なぜ自分を皇后にするのか、自分が一生愛さなかったらどうするのか聞きました。
「俺はあなたの心を得るために最善を尽くします。今もそうしています、リナ」
何を恐れていますか?と逆に聞かれて、ユナは答えられませんでした。捨てられるのが怖いのか、一生イリアナ・グレインとして生きていくのが怖いのか、それともマグヌスを愛するようになる自分が怖いのか。
「わかりません」
マグヌスは笑って頷きました。ユナの言葉を信じたと言うより、ユナがそう言うなら信じてあげる、という寛容さでした。
「言ったじゃないですか。何も考える必要はありません。望むなら、あなたはただ俺の愛らしい獣でいればいい」
「望まなければ?」
「俺のそばを離れないならなんでも。好きなようにすればいい。俺が許可した範囲内でね」
それはペットと何が違うのかとユナが顔をしかめると、マグヌスは寄ったユナの眉間を親指で優しくほぐしました。
偽物の池はいつか本物になる
城内にある池に辿りつくと、マグヌスは馬車から降りてユナをエスコートしました。池には船が浮かんでいて、渡し船の2、3倍ほどの大きさで、真ん中には豪勢な食事が並べられ、赤い絹でできたクッションがしきつめられています。
ユナとマグヌスが乗った船が出発し、その後を追うように護衛を乗せた船も続きました。船の中で、マグヌスは「小屋にいた時にあなたとこうしてピクニックに行きたかった。俺を見る度に不安そうにするあなたを笑わせたかった」と話します。それはイリアナ・グレインではなく、ユナの話でした。
大きな池は周囲を木が囲んでいて、静かで、綺麗でした。マグヌスはここが皇帝が休息するために作ったものだと話します。周辺に木を植えて、池を作り、魚や岩をいれて環境を整えた。そうして何代か経つと、今では本物より本物らしくなりました。
「まるで本物のようじゃないですか。これを作るために皇帝がとても努力したそうです。偽物を本物のように作るためです」
説明を聞きながら、ユナは違和感を覚えましたがその違和感の正体がわからなかった。ただ反応を待っているように見えたので、「綺麗ですね」と言いました。
「愛しているよ、リナ。こう言い続けていると、いつかこれも本物になるでしょう」
ユナは違和感の正体に気付きました。
人工の池は時間が経てば本物より本物らしくなった。これ、池に例えたユナとマグヌスの関係の話をしていると思います。偽物の愛でも、時が経てば本物になるよね?って言う。それに対して「綺麗」って肯定的に返事しちゃったから、偽物の愛が本物になることを肯定したことになってる、と個人的に思いました。だからこその告白に続いたのでしょう。
執着と狂気の果て
マグヌスはたくさんの本を読んだけど、結局愛について理解することが出来なかったと話します。マグヌスがイリアナに感じているのは、愛のようで、愛ではない。休まず思い出しては自分のそばに置きたいし、彼女の幸せを願っている。けれど、その幸せも、悲しみも、絶望も、全てマグヌスによってもたらされるものでなくてはならない、とマグヌスは言いました。
それは、執着と狂気が点綴された言葉でした。
マグヌスはイリアナを閉じ込めて自分のそばにだけ居られるようにしたいけど、それはどう見ても愛ではないとマグヌスは話します。どの辞書にもそれが愛だとは載っていなかったから。もし逃げたら捕まえて足を折るし、最悪の場合は殺してしまうかもしれない。それでも、殺してでもイリアナをそばに置きたかった。
「だから俺はこれは愛ではないと結論づけました」
「はい、私が見ても違います。それは…愛でも何でもありません、メク」
同意の言葉が嬉しいのかマグヌスは笑ってユナの手を握りました。
「この偽りの池が本物になったように、あなたと俺もそうすればいい」
ユナは悪寒に震えながら、自分がマグヌスを愛して捨てられることで終わるのではなかったのかと尋ねました。考えたけれど自分はイリアナを捨てないし、この関係に終わりは無いとマグヌスは言いました。
マグヌスはかつて獣だった時、長い間悪夢を見させられ、イリアナによって温もりを与えられたと話しました。しかし、その温もりもイリアナが去ると消えてしまう。けれど、イリアナが変わってからは同情と哀しさをイリアナから感じ、少し触れた温もりはイリアナが去った後もしばらく残っていました。
だからこれ以上は許せないのだとマグヌスは言います。自分の全てを持って逃げたイリアナを。まずは従属させることから、と話すマグヌスに「今も悪夢を見ていますか」とユナは尋ねました。マグヌスは今はそうではないと答えました。
池の底にあるもの
マグヌスは食事をユナの口に運び、ユナはそれを咀嚼して、タイミングを見て質問します。今日の護衛の中にいつもいるマリオットが居なかったので、どこにいるのか聞きました。
マグヌスはしばらく答えずにいたけれど、マリオットは他の風狼と一緒に黒野に言ったと話しました。黒野とはどの国にも属さない規格外地域で、外から見ると一面暗黒に覆われていて、その中に何が存在するのかは誰も知りません。
マグヌスは黒野が中立地帯で代々帝国が管理しており、その管理のために各国が秘密協定を結んでいると教えました。黒野は元々風狼が管理する地域でした。
その黒野が広がっているという報告を受けたのだと話します。
黒野が広がれば世の中は闇に飲まれ、極寒期が訪れて人々は凍ってしまう。すぐに世の中が飲まれるわけではないけれど、それでも太陽が陰れば農作物や周辺に住む人々に影響があるので調査に行かせました。
皇后や王妃しか秘密を知らないから皇后になる理由がまたひとつ増えた、というマグヌスに返事ができず、ユナは池の中に魚がいますね、と質問を変えます。
5色の鯉もいるようだと説明され、ユナが池の中を見ると、そこにはシングルベッドやテレビ、ノートパソコンがある6畳の部屋が見えました。忘れたくても忘れられない場所だった。
ゆっくりと立ち上がるユナを見て、マグヌスが名前を呼びます。船首ギリギリに立つユナをまた呼んで手を伸ばすけど、それより前にユナは池に飛び込みました。最後に見たのは傷ついたマグヌスの顔でした。
家に帰りたい
間違った選択をしてしまったのかと思ったけれど、ユナの体は浮かび上がることなく下に沈みました。池の底から真っ黒なものがのびてきて、ユナを下に引っ張ります。呼吸が足りなかった。
帰れない、と声が聞こえました。息が詰まっても頭の中に響く声にユナはぞっとしました。
マグヌスも池に飛び込もうとすると、フェルトによって止められます。マグヌスは自分を静止するフェルトを精霊を使って闇に飲み込ませようとしたけれど、他の風狼がイリアナを連れて水面に戻ってきたのでマグヌスは闇を消してイリアナを抱きしめました。
船が地面に着くとマグヌスは闇で隙間をつくり、そこへ入っていきます。消えたマグヌスが姿を現したのは皇城でした。マグヌスは侍従長に風呂の準備をして着替えを置いたら部屋を出ていくように命じます。
マグヌスの目の前でイリアナは死のうとした。マグヌスが永遠に手が届かないところに行こうとした。イリアナを失うと思った時にマグヌスは強い後悔を感じました。
もっと、イリアナが逃げるという気力さえ無くすほどしっかりと首輪を握っておくべきだった。イリアナに壊れて欲しくなくて手加減していた自分の過ちだと思いました。
ユナが目を覚ますと、暗くて何も見えませんでした。しかし、自分の手を握るマグヌスの体温を感じて安堵します。そして、マグヌスが腹を立ててまた目隠しをしたのだと理解しました。
言い訳しようと口を開くが、マグヌスがそれを許さなかった。
「まさかあなたが俺の目の前で死のうとするなんて」
ユナは否定したかった。死のうとした訳ではありません。しかし、許可を与えられていなかった。マグヌスは今まで優しくしたけれど、それを辞めると宣言しました。ユナはどうにか引き止めたくてマグヌスの服の裾を掴むけれど、マグヌスはその指を解きます。それは明確な線引きでした。
目隠しが外され、なぜ死のうとしたのか聞かれるけれど、ユナは混乱してと不明瞭な言葉しか言えなかった。
「私はただ…」
家に帰りたかった。
しかしそれを伝えることが出来ずにいると、マグヌスが手のひらでユナの目を軽く叩きました。そうして目を開けると、布なんてないのに何も見えなかった。声だけが頼りなのに、声が遠ざかると怖かった。
「あなたが死ぬ理由も泣く理由も生きていく理由もひたすら俺でなければなりません。あなたの神はレグネバなんかじゃなくて俺です」
記憶を失ったイリアナには優しくするつもりだった。けれど、それも逃げなければの話だとマグヌスは言いました。言いたいことがあれば言って、と言われてユナは「私はあなたが怖い」と言いました。
マグヌスの笑い声が聞こえた後、ユナの耳元になにかが触れました。そうして、ユナは何も聞こえなくなり、何も見えなくなりました。
恐怖の先
それからのユナはベットで動くことが出来ず、暗闇の中で過ごしました。夢の中へ逃げたくても、視界が閉ざされていては逃げらません。強い恐怖の中で、やがてマグヌスの温もりを求めるようになっていきます。
精神が深い所に落ちていくと、聞き慣れているけど知らない声がイリアナの名前を呼びました。その声はユナに目を開けろと言います。けれど、目を開けても何も見えないし、開けたということをマグヌスが知れば機嫌を損ねるでしょう。
声は「闇は私たちの糧で、闇に飲まれてはいけない」と言いました。だから、目をゆっくり開けろ、と。ユナは声に従ってなんとか目をこじ開けます。
依然として何も見えなかったけれど、それでも誰かが目の前に立っているのが見えました。銀色の見覚えのある髪には、青黒い角がふたつ、背中には黒い翼が見えました。その見慣れない姿のグレイン侯爵にユナは驚きました。
グレイン侯爵はここが自分の精神世界だと話します。どのようにしてここに来れたのかは分からないが、何があったのか話してみなさい、と言いました。
「お父様…助けてください。どうか助けてください」
ユナがグレイン侯爵にしがみつくと、侯爵の声がひんやりと冷たいものになりました。
「彼がなにかしたのか」
ここは私の場所じゃない、とユナは涙を流してうったえました。皇帝のそばにいる自信がユナにはなかった。イリアナ・グレインの持っているものが重すぎて、耐えられなかった。
グレイン侯爵は明日の夜に尋ねると言って、涙を手の甲でゆっくり拭ってくれました。感覚がない他の夢とは違って、現実のように温もりを感じました。彼が悪魔だからかな?と思ったけど、自分を救ってくれるならどっちでも良かった。
傍にいてくれるにはどうすればいいのか
マグヌスはいつも人に裏切られる人生でした。みんな温もりを与えて、そして離れていく。最初のイリアナも、マグヌスにとって特別な存在では。兄弟たちにそうしてきたように、服従して、いつものように温もりを求めて生き延びるだけだった。イリアナが他人になったかのように変わるまで。
その時の、イリアナの命令のようでそうではない下手な命令をマグヌスは鮮明に覚えています。朦朧としていても彼女がおかしいと気づいていて、それが記憶喪失からだとわかって納得しました。
マグヌスは自分の膝を抱えてベッドの上で丸くなっているイリアナを眺めます。すでに3週間経過しましたが、マグヌスはイリアナのそばを離れたことはありませんでした。しかし、簡単に手を出すこともしなかった。
身震いしながらも自分を頼るイリアナを見て満足はするのに、かえって腹正しくも思いました。それでもマグヌスには理由がわかりません。自分が望んだはずなのに。
イリアナに自分を見て欲しかった。名前を呼んで、優しく撫でてて、優しく口付けして欲しかった。マグヌスの中では後悔と恨みと欲望と罪悪感が入り交じっていました。
マグヌスはイリアナの耳に触れて、聞こえるようにしました。しかし、「イリアナ」と呼んでも答えてはくれません。言いたいことがあったら言っていい、と言うと、イリアナは「ごめんなさい」と言うので、マグヌスは自分がゴミになった気分を味わいました。
前は殺そうとしても殺せない人だったのに、今は弱りきっていました。人を大切にするにはどうすればいいのか、永遠に相手が傍にいてくれるにはどうすればいいのかマグヌスにはわかりませんでした。足を折って首輪をつけて自分の足元に跪かせるのとは違う方法があるのだろうか。
そう考えながらマグヌスはイリアナの目に触れました。
2巻後編を読んだ感想
ああああああマグヌス〜〜〜〜〜〜!このあんぽんたんめ…
子供の頃から家族に捨てられたりしてまともな人間関係を築いてこなかったので、方法がわからないのでしょうね。傍にいて欲しいのに、逃げようとするから捕まえたけど、なんだかこれじゃないと思う、みたいな違和感をずっと持っているのでしょう。
早く二人がいい感じの着地点を見つけますように…。
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