結婚商売(결혼 장사)の韓国の原作小説3巻(前編)のネタバレ感想です。
作者・KEN 作画・ENA
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9章 トーナメント
庭園の散歩
体調不良のため家族との会食も暫く取りやめることになったビアンカ。イボンヌはトーナメントがあるのでそれを見たら気分が良くなるのでは言います。
イボンヌは、好きな相手にはかっこ良い所を見せたいと思うのは男として当然だと言いますが、ビアンカはザカリーが自分のことを好きでいるとは思えませんでした。
アルノーからはザカリーと3人の軍部長がトーナメントに出場します。
ビアンカがイボンヌとガスパルを連れて気晴らしに庭園に散歩に来ると、同じく散歩しに来た令嬢達と出会います。
その中の一人(子爵家令嬢のセリーヌ)がビアンカの真っ赤なドレスを見て「相当な金持ちの家」だと妬ましく思いました。しかしビアンカのつけているネックレスがエメラルドではなくペリドットなのを見て、ドレスに見合わない家格の人間であると判断します。ビアンカはそんなセリーヌの考えを表情から読み、セリーヌのことを頭が悪いか見る目がない人だと思いました。
ペリドットはエメラルドよりグレードが低いとされていますが、ビアンカのペリドットは純度も高く大きかったので単純に「ペリドットだから価値が劣る」とも言えません。また、ペリドットを飾る真珠は上等品であったため、その真珠がついているならペリドットの価値も分かるはずなのに、ということでビアンカはそのようにセリーヌを判断しました。このネックレスはビアンカが15歳の時にザカリーが贈ったものでした。
彼女達に付き合う気は無かったビアンカは名乗ってすぐに立ち去った。相手の名前を聞きもせず不機嫌さをあらわにして立ち去るビアンカに、自分達が侮辱されたのだと理解した令嬢達は悪口を言い合います。その中でオドオドと様子を見ることしかできないダボビル伯爵夫人のカトリーヌは、悪口に参加したくなかったので口を挟みませんでした。
ペリドットのネックレス
令嬢達の連れていた侍女に、アルノーを追い出されたアントがいました。ビアンカはアントのことを覚えていなかったけれど、イボンヌが気づきました。ガスパルはザカリーに報告し、ザカリーは急いでビアンカのもとに訪れました。
ビアンカはこの生真面目な男に情婦がいるなんて噂をもう信じていなかった。だからといってイボンヌが言う、ザカリーの好きな相手が自分だとも思えなかった。相手が自分を愛するなんて簡単に信じることがビアンカにはできませんでした。
寂しかったビアンカにとって、フェルナンは日照りに降った雨のようだった。それを信じた結果はただ残酷な裏切りにあっただけでした。それなのに、今度は夫であるザカリーを信じたらどうなってしまうのか、ビアンカは怖かった。
ビアンカの部屋に訪れたザカリーは彼女を見て、いつもより特に眩しく感じていました。白い肌を引き立たせる赤いドレスはもちろん、彼女の瞳と同じ色のネックレスも。ビアンカのために選んだものでしたが、贈ってから身につけている所を見たことがなかったので、ザカリーは喜びました。
個人的な想像なのですが、ネックレスは回帰前の15歳の時に贈られたものなので、もしかしたら回帰前のビアンカは冷静に考えられずに「真珠は上質なのに、なんでよりによってペリドット…!」「大きければいいって問題じゃないのよ!」って怒って身につけなかったのかなと思いました…どうなんでしょうね…
以下の会話が可愛かったのでそのまま翻訳した文章を掲載します。
「ネックレスが良く似合う」
「もちろん。誰かさんが選んでくれました。ドレスはどうですか?あなたと一緒に選んだ生地で作ったんです。覚えていますか?」
「覚えている。よく似合ってる」
「良く似合うという言葉の他に言ってくださる言葉はありませんか」
「美しい」
今回のドレスを作るとき、どの布を当ててもザカリーが「似合う」というので布選びに難航しました。しかし、布についた細かい汚れやかすかなカビの跡、細く解けた糸などを見ては「こんなものをビアンカに着せるつもりなのか」と不機嫌になるので見る目は確かでした。
逆にザカリーは自分の服に関しては少しも気を遣わないため、ビアンカが選びました。彼の恵まれた体格はなんでも着こなします。これまで女たちがザカリーを褒めていたけれど、ビアンカはそれを理解できなかった。しかし、彼への恐怖がひとつひとつ解消され、ようやく冷静に見ることができました。
「粗野な身なりでもいいけど、着飾ったら女たちの視線が釘付けになるでしょうね」
彼に情婦がいてもそうかと納得するくらい度外視していたけれど、なんの変化が起きたのかまだ分かりませんでした。
トーナメントの話になったので「危険ではないですか」とビアンカは心配しますが、ザカリーにはトーナメントに出る理由がありました。ビアンカの周りを飛ぶジャコブのような小バエを追い払うためでした。
ビアンカはザカリーを心配していましたが、まさか自分が心配されているとは思っていなかったザカリーは、体調の優れないビアンカに観戦に来なくて良いと言います。体面もあるので観戦しないなんてことはできない、と主張するビアンカに、体面より体調を優先するべきでだとお互いの会話が対立してしまいます。「君のために参加する訳でもないので無理はしなくていい」と言うザカリーの言葉に、ビアンカは落ち込みました。
素直になれない(なり方を知らない)意地っ張り同士のすれ違ですね。もどかしい…
勝利の誓い
トーナメントでは馬に乗って槍を使用する馬上槍試合が行われます。名誉のために戦う騎士は、自分が誰のために戦うのかを重視しています。通常それは自分の仕える主君でしたが、宮廷風恋愛では騎士が愛する相手のために戦って勝利をおさめるのがロマンチックだと考えられていました。
宮廷風恋愛とは元々、高位の貴婦人に対する騎士の恋愛奉仕を指します。貴婦人のために命をかけて戦い、その身を捧げることから、より深い関係に発展するのでしょう。(つまり不倫)その騎士と貴婦人との関係にロマンスを感じた貴族達の間で恋愛(不倫を含む)を「宮廷風恋愛」といって楽しんでいたのかな、と思いました。政略結婚が当たり前で、夫婦仲は冷めたものが多かったでしょうから…。
若い令嬢たちの間では勝利した騎士が、勝利の薔薇を自分に捧げてくれるのを夢見ていました。そんな彼女達にとって、ザカリーはもちろん、参加する3人のアルノーの騎士たちの栄誉まで受け取れるビアンカは羨望の的でした。
ビアンカはザカリーが実力のある騎士だというのは理解できたけれど、回帰前に呆気なく死んでしまったザカリーを思うと不安になりました。恐らくジャコブが混乱に乗じて暗殺したのではないかと疑っており、今回のトーナメントでも似たようなことが起きるのではないかと思っていました。
イボンヌに案内されて競技場の観戦席に座ると、端の席から吟遊詩人の奏でるリュートの音が聞こえてきた。吟遊詩人はビアンカの元愛人フェルナンでした。
フェルナンは自分の外見に自信を持っており、首都で大儲けするつもりでした。本来貴族しか入れない観覧席でしたが、知り合いの子爵夫人の協力で上がってこれました。
フェルナンは自分への強い視線を感じてビアンカの元に行きますが、話もしたくもないビアンカはどれだけ声をかけられても無視し、まだザカリーにハンカチを渡せていなかったのでそばにいたイボンヌに「夫に会いに行く」と告げて立ち去ります。フェルナンはそんなビアンカの態度を見ても「もう少し積極的にすれば心を開くだろう」と勘違いしていました。
貴婦人は戦う騎士に服の袖、髪の毛、あるいはハンカチを渡すのが慣例でした。そのため、ビアンカもザカリーのためにハンカチを渡す予定だったようです。
ビアンカは従者を退室させてザカリーと二人きりになります。ハンカチを取り出すビアンカの指は震えていました。
ソヴールは以前「ロベル卿は奥様にトーナメントの薔薇を断られたどうしようと心配していました」と教えてくれた。その時はわからなかったが、今はロベルの気持ちが理解できました。ビアンカがトーナメントを観戦するのも気に入らなかったザカリーがハンカチを喜んでくれるかわからなかった。
ビアンカが差し出したハンカチをザカリーはゆっくりと受け取り、ザカリーは長い間沈黙しますが、結局沈黙に耐えられず自分で作ったことをビアンカが明かすとザカリーが驚きました。そこでようやくザカリーが嫌がっていないことがわかり、ビアンカは緊張から抜け出せました。
ザカリーがビアンカの前に膝をつき、ビアンカの手の甲にキスをしながら囁きました。
「家門に誓って、必ず君に優勝を捧げよう」
外は騒がしかったけれど、世の中にまるで2人だけが残ったようでした。ビアンカの人生において最もロマンチックな瞬間は、フェルナンから告白された時でしたが、今この瞬間はその時と比較にならないほど胸がいっぱいになっていました。
日がのぼる刹那、暗かった世の中が明るく覆われるように、ビアンカとザカリーが目を合わせているしばらくの間、多くのことが生じ、消え、変わることを繰り返した。 夜と朝の隙間に染み込んだ夜明けのような奇跡。しかし、それの正体が正確に何なのかは分からないまま、ビアンカは静かにザカリの誓いに答えた。
「あなたに祝福を、勝利を、栄光を」
ビアンカはザカリーからハンカチを受け取り、ザカリーの腕を掴んで立たせて彼の腕にハンカチを結びます。そこに口付けを落として「優勝、期待しています」と言いました。
イボンヌとガスパル
気分転換ができたビアンカが席に戻ると、フェルナンは他の貴婦人に話しかけられていました。
ビアンカ達の観覧席よりも高い席には王族たちが座っていたが、ジャコブの姿はありませんでした。何試合か試合が行われた後、ビアンカの兄ジョアシャンの試合が始まった。兄の実力を知らないビアンカは不安になりましたが、ジョアシャンは無事に勝利をおさめ、勝利の薔薇をビアンカに渡しました。
その後もソヴールとロベルが勝利し、ビアンカに薔薇を渡しにきました。ロベルの薔薇を受け取ると彼は驚いていました。ソヴールが言っていた言葉は誇張ではなく事実だったようで、ビアンカは笑うのを我慢して彼の功労を讃えます。ガスパルも勝利をおさめ、ビアンカに挨拶します。イボンヌが「4本目の薔薇です」と受け取るようビアンカを促すけれど、ビアンカは動かなかった。
ガスパルはイボンヌの名前を呼び、「受け取ってください」とバラを差し出します。目を大きく開いてガスパルとビアンカを交互に見るイボンヌの様子を見て、ビアンカは笑って「ガスパル卿が待っているじゃない」と促しました。
「私の薔薇を受け取ってください、イボンヌ」
勝利の薔薇を受け取ったイボンヌは、ガスパルが立ち去った後、「どうすれば良いか」とビアンカに尋ねます。勝利の薔薇は貴族女性が貰うもので、平民が貰えるとは思っていませんでした。「あなたは、元々男というのは自分の好きな女によく見られたいものと言っていたじゃない」と言い、ガスパルがイボンヌに好意を持っていることをビアンカは教えます。
ビアンカにトーナメントの話をするイボンヌの言葉をしっかり聞いて計画を立てていたガスパルに、ビアンカは内心で「熊のようだと思っていたのタヌキだった」と思いました。タヌキ扱い…!
ジャコブの薔薇
そのあとも数回試合が行われ、ビアンカは顔も知らない騎士から薔薇を貰いました。英雄であるザカリーに対する尊敬や、彼女が薔薇をたくさん貰うのを見てそれにならった人も。
薔薇を受け取ることが貴婦人の誇りなら、薔薇を渡すのも騎士の誇りだった為、騎士は仕えている主人ではなくても貴婦人に薔薇を渡す事に憧れを持っていました。自分の英雄的な瞬間を完璧に仕上げたいという自己陶酔。
そんな彼らが薔薇を渡したいのは誰もが認める貴婦人で、さらに相手がその薔薇に深い意味を置くことを望んでいないのが理想でした。そうした考えから、今日ビアンカは騎士の相手となりました。
そのように騎士たちから選ばれたのはビアンカだけではなく、王女であるオデリーも同じでした。彼女は生まれながらの騎士の使えるレディーでしたが、オデリーは未婚の28歳。国王が溺愛するあまり求婚を全て断ってしまいましたが、オデリー自信も結婚を嫌がっているようでした。
ビアンカにとって退屈な試合が繰り広げられた後、観覧席がざわついた。ザカリーの試合かと思ったが、壇上に上がった盾はアルノーではなく、セブランの家門でした。ジャコブの試合が始まった。
対戦相手は相手がジャコブだと知るとすぐに試合を棄権しました。観衆も理解しブーイングは起こりませんでした。それよりもジャコブが誰に勝利の薔薇を捧げるのか気になっていました。ジャコブが王族の観客席を通り過ぎ、貴婦人達が集まる方に馬を走らせると歓喜でざわつきました。
金髪碧眼の容姿に優れた未婚の王子。しかし、ビアンカは嫌な予感がしていた。聖騎士のように見えても、ジャコブが悪魔だと知っていました。そして、ビアンカの悪い予感はよく当たる。ジャコブはビアンカの前で馬を止め、ビアンカに薔薇を渡しました。
「活躍する姿を見せることができなくて残念だが、それでも私の薔薇を受け入れてくれませんか、アルノー伯爵夫人?」
ビアンカは受け取りたくはありませんでしたが、断るわけにもいかず受け取りました。
ザカリーの嫉妬
ジャコブが去った後、フェルナンが再びビアンカの元にやってきます。ビアンカにとってフェルナンは横でウロウロと飛び回るハエでした。汚くて面倒くさい。夫の試合が始まるから、と追い払おうとしてもフェルナンは引きません。そしてついにザカリーの試合が始まった。
フェルナンはザカリーがビアンカの夫だと知って驚きました。いくら不倫が問題視されないとは言っても、夫によってはそうではありません。ザカリーを怒らせると吟遊詩人でしかないフェルナンの命など簡単に消えてしまうため、フェルナンはこっそりビアンカと距離をとりました。
ザカリーはトーナメントに出場することは少なかったけれど、国王の孫アルベルの婚約相手であるカスティヤ王国と微妙な軋轢があり、トーナメントの優勝を譲るわけにはいかないので特別に頼まれていました。
ビアンカはどんな顔で待っているのか、と考えながらテントを出たザカリーでしたが、彼が見たのはジャコブがビアンカに薔薇を渡す姿でした。ジャコブが競技場から出ていくのを見た後にビアンカに視線を戻すと、今度は吟遊詩人が彼女のそばにいました。小バエがいつの間にか1匹から2匹に増えていました。いつまで男たちにビアンカが無関心でいられるか、ザカリーには自信がありませんでした。
ザカリーの試合が始まりました。ザカリーは従者2人がかりで支える自分の槍を軽々と手にし、対戦相手に向かって馬を走らせます。槍は一気に相手の盾を打ち砕き、そのまま騎士を馬から落とした。場内は静まり返ったあと、大歓声が響きます。
鼓膜が割れそうな酷ほどの歓声の中、ビアンカの元に馬を走らせたザカリーは、彼女のそばにある薔薇を見て嫉妬しました。敬愛の意味のものが多く、ビアンカにとって特別な意味を持たない。しかし、ザカリーが渡す薔薇もまた、ビアンカにとって同じように意味の無いものだろうと思いました。
ザカリーはビアンカにとって義務的な夫ではなく、特別な人になりたかった。優勝すると授与される金の薔薇なら特別だと思えるだろうかとザカリーは考えます。もちろんザカリーが金の薔薇を渡すからと言って、他人の薔薇をビアンカが受け取るのを許すということではありませんでした。ビアンカの兄であれ、自分の部下であれ、全て気に入りませんでした。
ザカリーは当分ビアンカがトーナメントに来ないように言います。
「君のそばにいる小バエたちが気になる。最終日に優勝するから、本当に見たいならその時だけ来ればいい」
淡々とした口調でしたがビアンカが微笑んでくれたのを見て、ザカリーは盾も鎧も全て地面に落としてビアンカを抱きしめたい衝動にかられました。
「 俺の勝利の栄光を君に」
ザカリーの薔薇を渡す手が震えました。ビアンカはそっと受け取り、 「あなたの言う通りにします」と言ってさっきより明るく笑いました。ビアンカを見つめるザカリーの顔に優しい笑みが浮かびました。
トーナメント最終日
ザカリーに言われた通り観戦をやめてビアンカは部屋で過ごしました。イボンヌは落ち着いているように見せていたが、今日試合をするガスパルの様子が気になっているようでした。しかし、イボンヌはビアンカから離れませんでした。
ガスパスに答えはあげたのかとビアンカは聞くと、イボンヌはさらに平静を失いました。ガスパルは騎士一家なのでイボンヌが嫌でなければ悪い結婚ではなかった。欠点とするなら、戦争に行くので家を空けるという点だけ。
戦争でいつ死ぬかも分からない男との結婚を勧めるのは気が引けたビアンカでしたが、そこで自分もその立場であることに衝撃を受けます。これまでビアンカは自分さえ生きていられればよかった。家族とは疎遠で、周りに人もいなかったので、安否を気遣いたい人がいなかった。けれど、今のビアンカは違いました。
ビアンカは試合の結果を知りたいから見てきて欲しい、と頼んでイボンヌを部屋から追い出します。イボンヌは22歳。自分が22歳だったころはフェルナンに魅せられ、彼を真実の愛の相手だと信じていた。ビアンカはもう二度と愛を信じないと決めていた。ビアンカはまだザカリーを愛していないと自分に言い聞かせます。
イボンヌがソヴールを連れて戻ってきて、試合の結果を教えてくれました。ビアンカの兄のジョアシャンはベスト8まで残ったが、ザカリーと対戦して敗戦しました。ソヴールはイボンヌを軽くからかったあと、ガスパルがベスト4に残ったことを教えます。3人の軍部長の中で馬上試合が上手いのはガスパルでした。
ロベルは1つ目の試合で勝利したけれど、すぐに次の試合を行うことになり、相手はジャコブだった。対戦相手が棄権したことにより体力のあるジャコブと、2試合連続行うことになったロベルでは分が悪く、負けてしまいました。明日ジャコブはザカリーと対戦するのでソヴールは「伯爵様が必ず勝つでしょう」と言います。
ソヴール自身はカスティヤ王国の騎士に負けてしまい、そのカスティー王国の騎士は明日ガスパルと戦うことになっている。ベスト4に残れなかったソヴールはザカリーから明日のトーナメント最終日にビアンカの護衛を命じられていました。
その日ビアンカは疲れていつもより早めに寝ようとしたけれど、なかなか寝付けず悪夢を見ました。ザカリーが戦争で胸に矢を打たれて死ぬ、そんな夢でした。
トーナメントの最終日は1番華やかで観客も多かった。今日は護衛としてビアンカの後ろにソヴールが控えているのでフェルナンは近づけません。
最初の試合であるガスパルとカスティヤの騎士の試合が始まった。カスティヤの騎士は岩石のように巨大で、騎士と言うよりは船乗りのようでした。彼らの試合は1度では勝負がつかず、2度目、3度目と衝突を繰り返し、カスティヤの騎士が勝利します。ガスパルは怪我をしていたので彼のことが心配で仕方ないイボンヌのために、行ってきなさいとビアンカは命じました。
勝利したカスティヤの騎士は、これまで誰にも薔薇を渡しませんでしたが、この時はじめて薔薇を渡しました。相手はセブランの王女であるオデリーでしたが、渡したカスティヤの騎士も、オデリーも、二人とも表情がなく乾いた対応でした。
ザカリーはビアンカとソヴールが気になっていました。できるだけ早く勝利することを決意していると、ジャコブが挑発してきました。ビアンカの名前を出して勝利したら薔薇をわたすことを仄めかしたり、傍で補佐するロベルを騎士ではなく従者のようだとからかった。しかし、ザカリーはジャコブを相手にしませんでした。ビアンカにとって自分の出来ることをするだけなので、ジャコブと言い争うのは意味の無い事でした。
馬を競技場に走らせたザカリーを見て、ジャコブは腹が立っていました。ジャコブ目的は、活躍する姿を父に見せて認めてもらうこと、ビアンカに薔薇を渡してそれとなく自分の心を告白することでした。父はジャコブの活躍を喜んでいるので目的は十分に達成していますが、ビアンカはジャコブの薔薇をあまり喜んでいなかった。
しかし、彼女にはトーナメントで十分近づけたので宴会でまた近づけばいい。そうして何度も押せば倒れない木も倒れるだろうとジャコブは思っていました。
「一番頭にくるのは、これからの試合で彼がザカリーに勝つ確率がほぼ0に近いということだった」と書かれていたので、ジャコブは自分が勝てないことを知っていたようです。
ソヴールの話し
結果として、ザカリーとジャコブの試合は凄惨なものでした。
王子という身分を考慮せず、ザカリーがジャコブを地面に叩きつけたから。王はこれを王族への侮辱だと感じて不機嫌になりますが、ゴティエがあれは侮辱ではなく騎士としてジャコブを認めたからだと説得しました。
ザカリーはビアンカの元へ馬を走らせて薔薇を渡します。回帰前、ビアンカはザカリーがどうやって死んだのか知らなかった。遺体を確認していなかったから。もう少し関心を持てばよかったと後悔しました。ザカリーはすぐ勝つという言葉を残して競技場に戻って行きました。
ソヴールはビアンカに、自分が2年ほど前にザカリーに情婦を勧めた事があると明かします。ビアンカも最初ザカリーには当然情婦がいると思っていたので驚かなかった。自分で考えても、回帰前はザカリーにとって酷い妻だった。ソヴールは、結果として情婦を勧めたけれどザカリーに叱られたことを話しました。ソヴールはその時ビアンカとは言葉が通じないという偏見を持っていたし、ザカリーがただビアンカを連れているだけだと誤解していた。
「私は奥様が好きです。 それで過去に伯爵様にそのようなお話をしたことを後悔しています。 奥様がこんな方だと知っていたら絶対情婦だなんて言わなかったはずなのに…だからといって許しを請うつもりはありません。奥様が罰を与えたければ受け入れます」
今までビアンカとは良好な関係を築いてきたが、それを壊す発言だったことをソヴールは理解していました。けれど過去の罪悪感と、ザカリーへの誤解があるなら解いてあげたい気持ちでした。
ビアンカとザカリーは両家の政治的な意味があって一緒にいるが2人の関係はそれだけだった。男女の関係があってもたやすく崩れるのに、政治的な意味が失われてしまったら。今はビアンカが周囲の男に関心がなくても、だからといって他の男と恋に落ちないとは限らない。けれどソヴールはザカリーが責任感ではなくビアンカを愛していると思っていました。
そうでなければジャコブや他の男をあれほど牽制することはないだろうから。しかしいざ男女の関係を薦めても「幼いから」という理由でザカリーは逃げてしまうので、ビアンカがザカリーを誤解していて当然だと思っていました。その誤解をガスパルもイボンヌも解くことはできないので、ソヴールは一度ビアンカにそれを話したかったのです。
ビアンカとザカリーの夫婦関係がどれだけ危ういものなのか一番理解しているのはソヴールでしょうね。
ビアンカはザカリーの生真面目な性格を理解していたので、もう情婦がいるとは思っていなかった。責任感ひとつで今までも、これからもビアンカの面倒をみるということも。ビアンカは男の愛を信じることはできなかったけれど、ザカリーの責任感は信じることができました。
金の薔薇
決勝戦がいよいよ始まった。
トーナメントで何人も怪我をして運ばれたのを見ていたので不安でしたが、勝ったのはザカリーだった。セブラン王国を象徴する黄金の薔薇を受け取ったザカリーはビアンカのもとに馬を走らせた。
競技場いた全員の視線がビアンカに集中するけれど、ビアンカは他人の視線など気にしていなかった。ビアンカは立ち上がって壇上の手すりに近づいた。ザカリーがビアンカから貰ったレースのハンカチで黄金の薔薇の茎をつかみ、ビアンカに渡した。
「伯爵様の勝利のおかげで私がこのような栄誉を享受できますね」
「君がいなかったら存在しなかった栄誉だ」と言ったザカリーは笑顔を浮かべていました。初めて見るザカリーの笑顔に、何を言えばいいのかビアンカは分からなくなりました。
背後から差し込む太陽の光も重なって、ザカリーの笑顔はいっそう神聖なもののように見えました。ビアンカは今まで努力していました。ザカリーを愛しているのではなく、ただ情が湧いただけだと。しかしそれは全て嘘だったことに気づきました。
「すべて君のおかげだ。 ありがとう」
「そんなにありがたかったら、感謝のキスでもしてくださったらどうですか?」
自分の気持ちを自覚したビアンカは目を合わせる勇気がなかったので顔を背けてすましていた。言ってみたものの、それが叶えられるとは思っていなかったビアンカですが、ザカリーの手がビアンカの頬を包み、「君が望むなら」と言ってビアンカにキスをしました。
何度も唇が重なり、2人のキスが終わると静まり返っていた大衆が再び大きな歓声をあげました。ビアンカは赤くなった顔をザカリーの胸に押し付け、先程の言葉は冗談だったのに、とザカリーを詰ります。
ザカリーは短い熟慮の後、「あの時言ったことはまだ有効か?」と聞きました。後継者が欲しいとビアンカが言った話でした。当然だと答えると、ザカリーはビアンカにの耳元で「今夜、君を訪ねる」と囁き、彼は馬を走らせて遠ざかってしまいます。ビアンカは黄金の薔薇を口につけ、唇を冷ましたけれど、気持ちまでは冷ましてくれませんでした。
二人のキスを見ていたジャコブの顔が「槍で粉々になった盾のように歪んだ」と書かれていました。このシーンを漫画で読むのが楽しみですw
本当に素晴らしい翻訳をありがとうございます!小説に引き込まれます!
私も皆さんと同様更新を楽しみにしています!
花さんコメントありがとうございます!
楽しみにしてもらえて嬉しいです。次の更新は来週月曜日になります!
文章が読みやすくて、引き込まれてしまいました。
翻訳ありがとうございます!
無理せず続編もお願いします。
グリーンさんコメントありがとうございます!
そう言ってもらえて嬉しいです…!続きも頑張ります。
翻訳本当にありがとうございます。次回更新を楽しみにしています。
匿名さんコメントありがとうございます!次回は9/12になります!
韓国のサイトのあらすじ翻訳でざっくりな内容は知ってましたが、こうして読ませて頂くと、2人の関係の変化に心ときめきますね。
素敵な感想をありがとうございます!
次回も楽しみにしています。
はなさんコメントありがとうございます!二人が歩み寄っていくのがいいですよね…!
更新楽しみに待っています❗️
早めの更新希望です❣️
あめさんコメントありがとうございます!更新作業がんばります!