原作ネタバレ

「結婚商売」韓国の原作小説ネタバレ感想 |外伝

結婚商売(결혼 장사)の韓国の原作小説にある本編完結後の外伝のネタバレ感想です。

作者・KEN 作画・ENA

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外伝

ルーシーの年の差結婚

アレクサンドラはゆりかごからの脱走が得意でした。ゆりかごの囲いを高くしてもいつの間にか抜け出してしまうので、ビアンカとイボンヌが目を光らせるけれど、隙をついて脱走してしまいます。今日もゆりかごから抜け出していたアレクサンドラをイボンヌが捕まえました。

ビアンカがアレクサンドラを抱きあげようとするけれど、1歳にしては力も強く、体の大きなアレクサンドラをビアンカが抱くのは難しく、イボンヌに止められます。ザカリーがやってきてくるとアレクサンドラを抱いてあやしてから、イボンヌにアレクサンドラを渡しました。イボンヌはアレクサンドラを連れてこっそり部屋を出ます。

ビアンカはイボンヌが退室したことに気づき、二人きりにしてくれたイボンヌの気遣いにビアンカは感心しました。イボンヌはいつもビアンカが何か気付く前に動いていました。イボンヌの妹であるルーシーもアルノー城でビアンカの侍女として働いていますが、彼女もまた気の使える仕事の早い女性でした。

ルーシーはイボンヌの結婚式の時に遠くで見ただけでしたが、ビアンカはルーシーよりも彼女のそばにいる髭面の男の方が気になった。年の差結婚をしていたルーシーの夫だったことを後から知ると、ビアンカはザカリーが例外的な存在であることに気づきます。

年が離れた夫を持つのはルーシーとビアンカも同じでしたが、ザカリーとその男では明らかに差がありました。ビアンカは自分の夫の容姿が優れており、それが「歳の差夫婦」の普通ではないことにようやく気が付きました。

年の差結婚をする女性は、もっと老人やおじさんに嫁ぐことが多いのだということを知ったんですね。

ルーシーの夫は、見下していたイボンヌが男爵位をもらった騎士に嫁ぎ、公爵家からも寵愛されているとわかると、その恩恵をもらいにアルノー城に訪れるようになりました。イボンヌの義兄だと聞いて門番は彼を通したが、人の顔を覚えるのが苦手なビアンカがルーシーの夫への不快感は覚えていたため、門番を叱りました。ザカリーもヴァンサンも門番を叱り、彼らはルーシーの夫を追い出します。悔しくなったルーシーの夫は家に帰ってルーシーを叩きました。

助けを求めにアルノー城にきたルーシーの姿を見て、門番は怒られるのを覚悟して城に入れました。ビアンカは怒らず門番を労います。離婚した方がよいとビアンカはルーシーに勧めるけれど、離婚は罪なので神様も許してくださらないとルーシーは言いました。ビアンカはルーシーのために法王に離婚の許可を求めてあげると約束します。

しかし、離婚しても再婚させられるだけだと言うルーシーに、ビアンカは離婚ではなく自分の侍女として城で暮らせば良いと提案しました。ルーシーの夫には城から派遣した屈強な男に生活金を届けさせることにして、ルーシーは結婚したまま夫から離れ、そのままビアンカの侍女として城で暮らすことになりました。

侍女のために法皇に許可を貰おうとする主人はいませんでしたが、ビアンカはルーシーがイボンヌの妹で、彼女が悲惨な夫婦生活を送っていると知って放っておけませんでした。

 

オパールのおはじき

ザカリーから金が混ざったオパールを受け取ったビアンカは、それが装飾品ではなく高価なおはじきだと知って遊んでみた。乳母のジャンヌがいた頃はこうして遊んでいたけれど、乳母が死んでからは遊ばなくなっていました。

おはじき…ここは韓国語で「공기놀이 (コンギノリ)」と書かれていました。日本でいうおはじきのようなもので、韓国の遊び道具だそうなので、ここでは「おはじき」と表記しています。

ジャンヌはビアンカの母親が連れてきた侍女でした。母親の家は代々王妃を輩出してきた家門で、ビアンカもそうなると思っていたのでしょう。ジャンヌが見ていたのはビアンカの幸せではなく、ビアンカの血筋の繁栄だけでした。そう話すビアンカに、しかし幸せな瞬間もあっただろうとザカリーが言うので、ビアンカは美しい思い出だけを抱いてジャンヌを見送ることにしました

ビアンカはザカリーにもやってみるよう勧めましたが、ザカリーはとても下手くそでした。あまりの腕前にビアンカは腹を抱えて笑うほどです。ザカリーが体を使うことで下手なことがあったなんてとビアンカが言うと、「俺が体を使ってすることで得意なことはあった?」と聞かれて、ビアンカは初夜を思い出しました。ビアンカは耳を赤くして「乗馬と…」と言葉を濁します。問い詰めるザカリーがビアンカを抱きしめてました。まだ日が明るいというビアンカの声は聞き入れてもらえず、そのままカーペットの上で服が乱れました。

真昼の情事は、ビアンカの体力を気遣って比較的早く終わりました。ザカリーは1度だけでは足りていなかったけれど、これ以上続けるとビアンカが寝込んでしまうことを理解していました。まだ続けてもいい、というビアンカにザカリーは服を着させます。本来服を着付けるのは侍女の役目でしたが、ザカリーも度々行うので着付ける腕が上手になっていました。

ザカリーはオデリーがビアンカとアレクサンドラに会いたがっていることを伝えました。即位してからまだ1度もビアンカは首都を訪れていませんでした。オデリーに会うために冬が来る前に首都へ行くことを決めました。

2年ぶりの旅行の支度をイボンヌが整え、一緒に行くルーシーは初めての首都に期待をふくらませていました。年々年老いていくヴァンサンにそれとなく引退を勧めますが、「奥様とお嬢様が心配なのに引退するのは不安です」と言いました。

 

首都での出迎え

馬車が領地を離れました。アレクサンドラは馬車の中でもにこにこと笑っていたが、彼女の脱走癖がなおるわけではありませんでした。ゆりかごから馬車へ変わっただけ。それでも無事に首都へたどり着きました。2年ぶりに訪れた首都は道が整備され、以前より人が多かった。

行列を見た人々は歓声を上げてアルノーを出迎えました。アルノーの行列の中に馬車があるのを見て、人々は聖人の訪れを大きな歓声で出迎えました。人々はビアンカが少しでも馬車から顔を出すのを期待していたけれど、ビアンカは「聖人らしくないのでがっかりするだけ」と言って顔を出しませんでした。

聖人に強い関心を示す人々にも嫉妬していたザカリーは、ビアンカが馬車から顔を出さなくて安心しました。

ビアンカ達に割り当てられたのはかつてオデリーが使っていた部屋でした。カーテンや天蓋がオデリーの好きな青ではなく緑に変えられ、ビアンカの好みに合わせてありました。この部屋は王女が使っていたので調度品が値段もつけれないほど高価でしたが、ビアンカが戸惑ったのはそこではありませんでした。

この部屋はオデリーを愛したヴィクトル二世が細部まで気遣った部屋で、オデリーはそこで長い間暮らしていました。思い出の部屋だったはず。そんな大切な部屋をビアンカのために出してくれたことに戸惑っていると、王の侍女が来て、オデリーが呼んでいることを伝えました。ビアンカとアレクサンドラの2人に会いたいというオデリーに、ビアンカはザカリーを残し、侍女のイボンヌとルーシー、護衛にガスパルを連れてオデリーの所に向かいました。

オデリーがザカリーを省いたのは政治的な話をしたくなかったからでした。しかし、ザカリーはビアンカだけを行かせるのことがとても不満でした。しかしオデリーに逆らうわけにもいかないので複雑でしょうね。

 

ビアンカが運命を変えた人

ビアンカの元を訪れた侍女は、かつてビアンカとアントの件で争ったヴォルネ子爵家のセリーヌでした。イボンヌはセリーヌを警戒していたけれど、ビアンカはオデリーの元に案内するセリーヌに「久しぶりね」と声をかけます。

「覚えてくださって光栄です、公爵夫人」

時間が経ったからか、毒気のない様子のセリーヌは、王城で生きていく人らしさがありました。ビアンカの迎えに来たということは、オデリーの信頼を得ているということでもあります。ビアンカはまだセリーヌがオデリーの所にいるとは思わなかったと話しました。

セリーヌはそれをかつての出来事に対しての皮肉だと思ったのか「公爵夫人には至らない点をたくさんお見せしました」と答えます。ビアンカはかつての出来事はすでに清算されていると思っていたので、そうではなくてセリーヌがヴォルネ子爵家を継ぐために出発していたと思っていた、と答えました。

セリーヌは子爵家を継ぐようにオデリーからも同じ提案を受けていたましたが、既に断っていました。自分の器を知っています、とセリーヌはビアンカに話します。

ヴォルネ子爵は首都への出入り禁止となっていたが、オデリーが王位についた時に解除されました。ヴォルネ子爵はすぐにセリーヌに逢いに来て、「自分がどれだけ優れているかを王女に伝えなさい」と言いました。自分の父親が王国の女王となったオデリーを見下していることに気づいたセリーヌは、子爵を城から追い出し、オデリーに頼んで再び首都への出入りを禁止にするよう頼みました。セリーヌはヴォルネ子爵と決別し、オデリーを選んだのです。

オデリーを見下すヴォルネ子爵が、唯一の子供とはいえ娘であるセリーヌに爵位を渡すとも思えなかったし、ヴォルネ子爵家は没落の道を歩いていました。ヴォルネ子爵が望むなら養子でも迎えればいいと話すセリーヌに「その決定も悪くない」とビアンカは肯定しました。好意的なビアンカの答えにセリーヌは思わず足を止め、再び歩き出して、口を開きました。

もしかしたら神様は私の運命が変わることを願ったかもしれない」

神様がビアンカを選んだと聞いた時は驚いたが、セリーヌもビアンカによって運命が変わった1人でした。飛躍した考えではあったけれど、ビアンカと出会うことで得た幸せは、もしかしたら神様が与えてくれたものかもしれない。そう思っていたのはセリーヌだけではありませんでした。イボンヌも、ルーシーも、そしてガスパルも。

「広大な自己合理化だと思われるかもしれません。 しかし確かなのは、夫人のおかげで私の人生が変わりました。 自信を持つことができました。 感謝いたします。」

侍女になった直後、あのとき残っていた自尊心によって伝えられなかった感謝の言葉でした。二人の間にあったお互いに対して抱いていた心のしこりが完全に消えた瞬間でした。

ビアンカが案内されたのは王が個人的な人々を招いて招待する個人謁見室でした。オデリーはビアンカを歓迎し、イボンヌが抱えるアレクサンドラを見ました。アレクサンドラはいつものようににこにこと笑っていて、それを見たオデリーはビアンカにそっくりだねとと言いました。

「あなたに似た瞳がとても聡明で優しく見える」

オデリーはそう褒めたあと、アレクサンドラを抱こうとします。アレクサンドラは普通の1歳児よりも成長が早かったので、重いからとビアンカは忠告しますが「親友の子を抱かせて」と言ってイボンヌから受け取りました。

ビアンカとオデリーはその日夕暮れまで会話を楽しみました。オデリーはビアンカが首都に来たことの歓迎と、神の意思が叶ったことを称えるための舞踏会を用意していると話します。人が多い場所が好きではないビアンカでしたが、オデリーが即位後に開く初めての舞踏会で、それはビアンカのためのものだったので、断ることができず「楽しみです」と言いました。

 

お腹が空いたビアンカ

オデリーとの歓談が思ったよりも長くなってしまったので、ビアンカは急いで戻る道を歩いていました。「公爵様が首を長くして待っていらっしゃいますね」とイボンヌが声をかけますが、ビアンカはザカリーが待っているのではなく自分で迎えに来そうだと思っていました。

回廊の反対側から歩いてくる貴族の男が見えました。身なりは整っているが、ぎこちない様子を見て、裕福な地方貴族の子息だろうと思い、ビアンカの関心はそこで終わります。

ビアンカの関心とは違い、男はビアンカから視線を外せなかった。ぼんやりと見つめる朦朧とした目付きに、ガスパルとイボンヌが警戒します。何も起こらないようにと願っていたイボンヌだったが、男はすれ違った後に「夫人」と声をかけました。すれ違ったビアンカを追いかけ、イボンヌが抱く銀髪の子供も、大柄なガスパルも目に入らず、ビアンカに声をかけて名前を聞きました。

ビアンカの予想した通り、ジョセフは成人を迎えてはじめて首都にきた田舎者で、父親であるエバノフ男爵のかわりに領地の税金に関する書簡をオデリーに渡しに首都を訪れていました。首都にきたジョセフは宮廷恋愛というロマンスに胸をふくらませており、そこでビアンカと出会ってしまった。

イボンヌがビアンカの前に出て「この方を誰だと思っているのか。訳もなく騒がないでください」と高圧的に叱責しますが、ジョセフは引くことなく「どうか名前だけでも」と食い下がりました。

ジョセフの粘り強さを見て、ビアンカは困惑していました。言葉では解決できそうにないが、このことをザカリーが知ったら大変です。そこへ、ビアンカを迎えにきたザカリーが来てしまい、ビアンカはもちろん、イボンヌやガスパル、ルーシーの顔まで急激に暗くなりました。

ビアンカは誤魔化そうとして、どうして来たのかと笑いながらザカリーに話しかけます。しかし、ザカリーにはそんな浅知恵は通用しませんでした。ビアンカの言葉が長くなる前に「君がなかなか来ないから迎えに来た。ところであいつは誰だ?」と殺気を隠そうともせずに話しました。

ジョセフはオオカミの前のウサギ、あるいはヘビの前のカエルのように固まってしまった。今事実をいっても複雑になるだけだったので、ビアンカは「通りすがりに会った人です。首都がはじめてなので道に迷ったようです」とザカリーに説明します。

ザカリーはジョセフのどこを見ても彼が自分より良いところが無いと思ったけれど、それでもビアンカと同世代という事が気になっていました。

ルーシーはその場を和らげるために「私がお連れします」と素早く乗り出します。ルーシーとビアンカ、イボンヌ、ガスパルの4人の間で密かに視線が交わされ、彼らは無言の合意をしました。

奥様がお腹を空かせているのに、このままだと食事の時間が遅くなりそうですと話す使用人たちに助けられ、ビアンカはぎこちなくお腹を抱えて「陛下と話していたらお腹がすいてきて…」と言いました。これまで12年の結婚生活の中でビアンカが空腹を訴えているのを初めてみたザカリーは、その嘘にまんまと騙され、ビアンカをつれてその場を立ち去りました。

 

ルーシーの決断

残ったルーシーはジョセフに「このようにもみ消されて幸いだと思ってください」と言いました。高い家門に仕える侍女は貴族から選ぶのが通常ですが、そうではなく例外的にビアンカの侍女をしているルーシーは、まだぎこちなかったけれど、それでもアルノー城に来て過ごし、ザカリーとの冷や冷やする場面を切り抜けたので臆することなくジョセフに話しかけました。

「私は本当にありえない事をしたのですね」

ジョセフは先ほどの人物がアルノー公爵で、自分が宮廷恋愛を持ちかけた貴婦人が彼の妻である聖人ビアンカだと遅れて理解しました。ジョセフはザカリーの武勇伝が書かれた本を何度も読むほどの信奉者でした。もちろん、ザカリーがどれだけ妻を大事にしているかも知っています。ザカリーと直接向き合ったという幸運と、彼の妻に宮廷恋愛を持ちかけた事実に、ショックを受けました。

もうわかったので次からは気をつけてください、とルーシーが言います。ジョセフはまるで雨に打たれた子犬のような有様でした。

「卿には他に良い相手ができるでしょう」

助言をしてからルーシーは自分のめちゃくちゃだった結婚生活を思い出し、恥ずかしさを感じてそのまま立ち去ろうとしますが、ジョセフがルーシーを呼び止めて、名前を尋ねました。ビアンカ達がジョセフの目の前でルーシーの名前を何度も口にしているのになぜ聞くのかと思ったところで、ルーシーは遅れて理解しました。

宮廷恋愛の基本は、名前を知っていても知らないふりをしてはじめるのが定石でした。

ルーシーは貴族の坊ちゃんが自分に言いよってきたのだと理解すると大笑いしました。

「私は奥様の侍女ではありますが、平民で、人妻です。卿に相応しい相手ではないでしょう」

そう言って二人は別れましたが、その後ジョセフはアルノーの宿舎のまわりをうろうろと徘徊し、ビアンカを追いかけてきたのかと誤解した軍部長達に詰め寄られました。しかし相手がビアンカではなくルーシーたどわかると軍部長達は安心しました。そしてその話はビアンカの耳に入ります。

自分のことで騒がせてしまったので謝るルーシーに、「貴族だし悪い相手ではない」と勧めてみるけれど、ルーシーは自分が人妻であることを主張します。しかしルーシーの結婚生活は歪んでおり、完璧に決別した関係でした。いまだに夫婦関係が続いているのは、ルーシーが離婚に振り切れなかったせいもあるが、何よりルーシーの夫が強く離婚を拒否していたせいでした。離婚すれば公爵家から受け取っていた生活金が受け取れなくなるためです。しかし、それさえ継続すれば離婚は難しくないだろうとビアンカは思っていました。

ルーシーはビアンカと話しをして考えた後に、夫との離婚を決意し、ビアンカに領地に戻ったら離婚すると話しました。自分に言い寄ってきた男のためではなく、今後の人生において夫との関係が邪魔になると思ったからでした。ルーシーが決断するのをこれまでずっと願っていたイボンヌとビアンカは二人で喜びました。

 

舞踏会

舞踏会の日になりました。ビアンカにのための舞踏会だったので普段より気にすることが多かった。新しいドレスに合わせて宝石を選び、イボンヌとルーシーもビアンカの身なりをチェックしました。

ビアンカは自分のドレスを新調する際にイボンヌとルーシーにもドレスを与えていました。ビアンカは一緒に2人にも参加してもらいたかったが、どちらか1人はアレクサンドラの面倒を見る必要があります。それでも自分だけのドレスをはじめてもらったルーシーは感激しました。

ジョセフはルーシーを舞踏会に誘ったけれど、ルーシーはアレクサンドラの面倒を見るために断りました。イボンヌは以前首都に来た際に舞踏会に参加したのでルーシーに譲ろうとしましたが、ルーシーが気にしていたのはアレクサンドラの事だけではありませんでした。初めての首都で、貴族の子息をパートナーとして舞踏会に参加してしまったら、夢に酔ってしまうのが怖かったのです。

ルーシーも同行させたかったビアンカですが、だからといって二人とも同行させては知らない人にアレクサンドラを任せることになるのでそれも不安でした。

ビアンカの話を聞いたザカリーは「ルーシーは次回連れていけばいい」と言いました。オデリーは今まで舞踏会を開きませんでしたが、ビアンカも来ていて浮かれている今なら舞踏会を2回、3回と開いてもおかしくは無かったので、「次回」が十分あり得ます。オデリーは元々舞踏会や宴会が好きでした。

ザカリーとビアンカが会場に入ると、騒がしかった人々が自然と口を閉じました。これでは舞踏会ではなくて演奏会のようだった。ビアンカは視線を外そうとするが、どこを見ても人々は彼女を見ていました。結局見るところがなくてザカリーを見つめます。

「何をそんなに穴があくほど見ているんだ。そうでなくともたくさん見ている顔なのに」

「周りを見渡してもあなたほど見るに値する人はいませんでした。あなたこそ私だけを見てるじゃないですか」

「俺は君しか見えないから」

ザカリーが当たり前のように答えた。

ビアンカは結局笑いをこらえきれずに高く声を出して笑いました。 ザカリーはそんなビアンカをじっと眺めたが、無表情な顔とは違って黒い瞳からは蜜がぽたぽたと流れ落ちそうなほどでした。

 

オデリーとテクトール

王族たちが会場に入ってきました。ゴティエはフォンティン公爵領の主人でもあったため、ゴティエの妃はフォンティン公爵夫人となって王城に留まっていました。息子のアルベルは第1王位継承権を持っており、今はオデリーの下で帝王学を学んでいます。先王妃(ヴィクトル二世の妃)は2人の娘を連れてきていました。

王族には今、未婚と寡婦しかいないため、貴族の男たちは彼女達が何を好んでいるか集まって話していました。それに対して貴族の女性たちは領地の税を増やす方法、農作物を多く収穫する方法など、今まで自分たちがすると嫌煙されるためできなかった話題を真剣に取り上げて話し合っていました。

女性が爵位を継ぐことが当たり前になってきたからこその変化でしょうね。女性が結婚によって家を反映させるための商売道具ではなくなったということがわかります。

オデリーが登場して、舞踏会のはじまりの挨拶をしました。そうして舞踏会がはじまると、まずはオデリーが自分のパートナーの手を取って会場の真ん中に躍り出ました。パートナーはオデリーの後ろに控えていた護衛騎士です。体格がよく、ガスパルに匹敵する程の大柄。護衛騎士はトーナメントで準優勝したカスティヤの騎士でした。

カスティヤの騎士であったテクトール卿は、オデリーに仕えたくてカスティヤを離れてセブランに帰化したとザカリーがビアンカに教えました。

帰化(きか)…他国の国籍を得て、その国民となること。

出典:goo辞書

そういえばトーナメントで彼がオデリーに薔薇を渡したのをビアンカは思い出して納得しました。あの時はどのような意図があるのかわからなかったけれど、今になって考えたら答えはひとつでした。

テクトールは固くて無表情だったが、オデリーに対する恋心が隠せていなかった。オデリーは賢いので、テクトールの感情にも気づいているでしょう。けれど、彼女は愛と敬拝を捧げられることに慣れていました。テクトールの心は、オデリーの心に大した重さにはならない。そしてテクトールもそれをわかっているからあれほど表情を引き締めているのだろう、とビアンカは思いました。

 

宮廷恋愛の終わり

ザカリーはビアンカを誘って踊りました。イボンヌとガスパルが踊る姿も見えます。イボンヌの顔は真っ赤になっていました。踊りながらザカリーはビアンカをからかった。ビアンカがザカリーの脇腹を指でつつくと、ザカリーはまるでナイフで刺されたかのように大袈裟に反応して見せました。

「また。また、そうやって」

「俺が何を」

「わざと大袈裟に騒ぐじゃないですか。実際に刃物に刺されても淡々と行動するくせに」

「刃物に刺されるより君の指で刺される方が痛い」

「これが痛いんですか?これが?本当?」

ビアンカが指でさらにつつくが、ザカリーは笑うだけだった。

それからザカリーは初夜の日に自分が緊張していたことと、他の男が気になって手を出さないはずだったのに手を出してしまったことについて深い後悔をしていることを話しました。ビアンカはザカリーがそれほど強く後悔をするほど固い覚悟をしているとは思わなかったので驚きました。

「それでもあなたが勇気を出してくれてよかった」

ビアンカは踊りを続けながら意地悪く聞いた。

「それで、その日以降はどうですか? あなたの女だと確信を得るようになって安堵しましたか。 実は、あなたの表情がいつも変わらないから私はあなたが何を考えているのか、たまに分からなくなるんですよ」

「その日以来?確信なんて無理だよ。もっと不安になった。 俺の目にはこんなに綺麗に見えるから、他人の目にも綺麗に見えるだろうと思って」

ビアンカに固定されていたザカリーの視線が周囲を巡ると、ビアンカを見ていた男たちが慌てて頭を下げました。

「今も同じだ。 今すぐ君を抱いて宿舎に帰りたいんだ。 今どれだけ多くの男たちが君を眺めているのか知ってる?」

ビアンカはそう言われて周りを見回してみるが、すでにザカリーによって整理された後でした。ザカリーはビアンカの頬を撫で、「嫉妬で狂いそうだ」と囁きます。

2人は立ち止まってお互い見つめあい、踊っていた人達は彼らを避けて通った。先にザカリーが沈黙を破り、「以前より我慢できるようになったけど、やっぱり今回も領地にすぐ帰ろう」と提案します。オデリーが反対するのがわかっていたビアンカはザカリーの頬を軽く叩きました。

「領地に帰るのはもう少し考える必要があるけど…とりあえず今はこっそり抜けませんか?」

ビアンカの提案にザカリーは笑って賛同しました。ザカリーとビアンカが身を寄せながら去っていく姿を、会場中が見ていました。

貴族の結婚は家同士の結び付きのためだったため、夫婦仲は良好ではない場合が多く、恋人を外に作るのが当たり前でした。しかし、ザカリーのビアンカを見たからか、首都ではそれから宮廷恋愛で恋人をつくることが減り、夫婦仲がよいのが美徳とされました。

当事者のザカリーとビアンカは相手に没頭していたため、そのような社交界の変化を知らなかった。

そのように舞踏会場を抜け出したザカリーとビアンカは庭園を歩きながら愛を囁いた。満開の薔薇の香りが鼻先をつく、甘い散歩だった

外伝を読んだ感想

全体を通した感想

これにて結婚商売、完走です!呆気ない終わりなので「もっと!もっとないの!?」となったのですが、執筆が2018年なんですよね…でも漫画が人気なのでまた書いてくれないかなあ…。

あと1巻と2巻は挿絵が1枚ずつあるのですが、3巻以降挿絵がなくて残念でした…なんで無くなったの…

ビアンカの人生やり直し話かと思ったら話のスケールが大きくて楽しかったです。私が個人的に一番推しているのはジャコブなのですが、彼のあの最後がとてもとても好きなんです。一人一人のキャラクターがよくできていて、宗教や戦争に関してもよく考えられているな、と思いました。

表現も、感情描写が多いので誰が何を考えているのかが変わりやすく、読みやすかったです。造語がほとんどなかったので、翻訳のしやすさもありましたね。

最後に

8月の終わりから記事を投稿し始めて、毎週月曜日に更新するたびにコメントがもらえて楽しかったです。LINEマンガで結婚商売にハマって、続きが気になるから原作小説を読み始め…読んだからには自分用のメモとして記事を始めたので、こんなに反応をもらえるとは思っていなかったです。

私はあくまで素敵な作品を翻訳して、それを要約・意訳したものを記事で紹介しているだけなのですが…それでも作品のファンの方と交流できて楽しかったです。ありがとうございました!

来週は考察記事を出しながら、次に更新する予定の「永遠なる君の嘘」の更新の準備を進めます。詳しい更新開始の日程はtwitterにてお知らせします。

「結婚商売」原作を読了したファンによるその後の考察・解説 LINEマンガやめちゃコミックなどで連載している結婚商売にハマり、続きが気になって韓国小説を読破した筆者による勝手な考察(らしき...
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いり
異性愛・同性愛に関係なく読みふけるうちに気づいたら国内だけではなく韓国や中国作品にまで手を出すようになっていました。カップルは世界を救う。ハッピーエンド大好きなのでそういった作品を紹介しています。

POSTED COMMENT

  1. みいしゃ より:

    いりさん、こんにちは。ビルヘルムとラインの話にハマり、その流れでここのザカリーとビアンカのお話を読ませて頂いて何度も何度も繰り返し読んで楽しんでいます。いりさんはジャコブ派と聞いておりますがその気持ち、私もなんだかわかります。彼もビアンカのことを誰にも負けないくらい熱烈に愛していたし、嫌われても卑屈にならないポジティブな性格(笑)。もしザカリーが死んでビアンカがジャコブと仕方なく結婚したとしても、ビアンカの「力」でいずれ国の為にいい仕事するようになるんじゃないかな?とか一人で想像巡らせて楽しんでいます。素敵な作品の翻訳をありがとうございます。私は仕事で海外に行くことが多いのですが、いりさんのお陰でタブレット持っていってホテルで何度もこの物語を読み返すことが楽しみとなっています。

  2. びー より:

    はじねまして。拝読しました。
    ものすごい読み応えでした。嬉しいです!!
    長文の掲載、本当にありがとうございます!!
    お疲れ様でした!

    • いり より:

      びーさんコメントありがとうございます!
      こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました!

  3. りか より:

    いりさまのおかげで、ハッピーエンドの概要がわかり、なんとも言えない不安が緩和され、少し落ち着いてマンガの続きを待つことができます。感謝でいっぱいです。
    原作は少し伯爵のキャラクターや年齢差が違い、雰囲気が漫画とは違うのでしょうか?原作も日本語の全訳が発売されることを祈っております。

    • いり より:

      りかさんコメントありがとうございます!
      漫画と小説の雰囲気ですか…確かに年齢差が違うのと、漫画だとザカリーが若干若く描写されているなと思っていますが、雰囲気が大きく違うという印象は受けませんでした。
      日本語版の小説が出てくれるといいですよね…漫画がとても人気なのでLINEマンガではノベル連載はしそうだなと思っています。

      • りか より:

        お忙しい中、お返事いただき、誠に有難うございます!
        雰囲気は大きくは変わらないのですね。
        ノベル連載、しそうとのこと、嬉しいです。
        いり様の訳は要点が整理され、鮮やかに物語の全容が活き活きと現れます。ノベル連載までの間、いりさまの訳を何度も読み返します。
        本当に有難うございました!

        • いり より:

          りかさんお返事ありがとうございます!
          あくまで私の予想でしかないのですが、同じLINEマンガで人気作がノベル連載しているのを見たので、もしかしたら…と思っております。そうなったら素敵ですよね。
          私の記事を褒めてくださってありがとうございます!読みやすくなるよう頑張ったので嬉しいです。こちらこそありがとうございました!

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