原作ネタバレ

「結婚商売」韓国の原作小説ネタバレ感想 |5巻・後編

結婚商売(결혼 장사)の韓国の原作小説5巻(後編)のネタバレ感想です。

作者・KEN 作画・ENA

ネタバレ記事一覧

1巻 2巻 3巻 前編 3巻 後半 4巻 前編
 4巻後編 5巻前編  5巻中編 5巻後編 外伝
まとめ 考察 3巻10章翻訳 パスワード取得  

▲ 巻数をクリックしてください。

22章 神の意志

ジャコブはいつも追う側でした。王座も、ビアンカも。しかし今は追われ、追い詰められていました。アルノー軍はジャコブを取り囲み、ソヴールが笑ってジャコブの前に現れます。

ソヴールは戦争の中で生きてきました。そして逃げたものを追うのがソヴールの役目でした。王子だろうと追われるものがとる行動はあまり変わりませんでした。

ジャコブは見逃せば礼をするとそそのかします。自分を捕まえても王族であるため結局ザカリーの手を離れるので、その時捕まえた屈辱を忘れないだろう、とも脅しました。しかしソヴールはジャコブの話を流し、徹底的に捕らえました。

ジャコブはアルノー城の真ん中にある広々とした平地に建てられた壇上に、縛られた格好で座っていました。依然としてジャコブの整った容姿は崩れていても綺麗でしたが、領民はひそひそとジャコブの悪口を言い、小石を投げました。そこへ、ザカリーとビアンカが現れて壇上に上がります。ジャコブは自分は王族だから殺せないと主張しますが、ザカリーはオデリーからの書信を手に持っていました。

「まさか俺の妻がこの瞬間のためになんの対策も立てなかったと?」

ビアンカの先見の明を誇るように、ザカリーは書信を開きました。オデリーの個人的な書信ではなく、それはオデリーが王の代理として書いた書信でした。その書信によってジャコブの罪が次々と明らかにされました。王子の名誉を忘れて伯爵夫人を奪うためにアルノーの領地を侵略した罪、聖人である彼女の前途を遮った罪、王位継承者であり兄だったゴティエ王子を暗殺した罪、甥のアルベル王太子の暗殺しようとした罪、アラゴン王国と協力して彼らの侵略を助けた罪。

オデリーの書信にはそれぞれの罪と証拠が書かれていました。オデリーは言葉通り城の中を荒らし、宿舎も荒らし、そこで暗殺者を発見して証言をとり、アラゴンとの密書も発見していました。

ゴティエのことで衰弱していた王は今回のことでさらに衝撃を受け、横たわったまま起き上がることはできなくなってしまいました。しかし、それでも王はジャコブから王族の地位剥奪の決定を出しました。ジャコブが王族でなくなれば、領地も爵位もない彼は一般騎士でしかない。ジャコブの処分はザカリーとビアンカにゆだねられました。

オデリーがここまで動けたのはジャコブがオデリーを見くびって何の対策もしていなかったからです。オデリーが王の代理になれたのはジャコブ派の勢力がアルノーに来ていたからでもありました。ある意味ジャコブのおかげだったので皮肉ですね。

ビアンカがジャコブを「兄弟を殺して国まで売り払った売国奴」だと言いますが、ジャコブはなぜビアンカがこのように冷たいのか理解できませんでした。「王宮の庭園であなたを殺すと誓った」と敵対心をあらわにするビアンカに、ジャコブは「信じてくれ。君を愛している」と繰り返します。

「あなたの愛は自分だけのための愛です。 それは私にとって必要のない愛ですね」

さようならジャコブ、とビアンカが立ち去る背中にジャコブが何度も名前を呼んだけれど、ビアンカが振り返ることはありませんでした。ザカリーにエスコートされながら壇上をおりたビアンカは、領民に向かってジャコブを斬首刑に処す宣告を下します。本来ならザカリーが宣告するべきでしたが、ビアンカがいなければ勝利の難しかった戦争だったため、誰もビアンカに対して不満を抱きませんでした。

ガスパルが斧を持ちます。腕の負傷をロベルが心配しますが、ガスパルには残っている宿願がありました。

宿願(しゅくがん)…前々から抱いていた願い。かねてからの願望。

出典:goo辞書

斬首刑は見ていて気持ちの良いものではない。ましてやビアンカは妊娠中だったのでザカリーは見ないように言いますが、「見るつもりです」とビアンカは頑なでした。

ジャコブとビアンカの目が合った。ビアンカが手を上げると、ガスパルの斧が振り上げられます。

ジャコブは最後に少しでもビアンカの姿を目に入れるために見つめていました。しかし、ビアンカの表情は冷ややかでした。世の中は不公平で、神様はひどい、とジャコブは悔しさを感じていました。ジャコブは死を目前にして自分が思っていたよりビアンカを愛していたことに気づきます。自分だけのための愛。ジャコブもそれを自覚したけれど、過去に戻れたとしてもどうすればこの状況を覆せるのかわからなかった。結局ジャコブの愛はビアンカに届きません。

ジャコブは口を動かして何かを囁きました。歓声に隠れてそれを聞いていた人はいなかったけれど、ジャコブを見つめていたビアンカは唇を読んで理解しましたが、それでも躊躇しなかった。ビアンカが手を下ろすと、斧が振り下ろされた。ジャコブの首は呆気なく落ちました。

ビアンカは壇上にあがって落とされたジャコブの首をかかげ、「逆賊ジャコブの首を切った!」と叫んだ。領民達の大歓声が広がります。ようやく、とビアンカは目を閉じて噛み締めました。平穏な日々がようやく訪れる。ビアンカの夫ザカリーと共にする平穏な日々。

アラゴンはジャコブの訃報を聞くと戦争を中断し、細かな終戦交渉はジャコブの葬儀後に行われることになりました。ジャコブの葬儀は王ひとりを慰めるためのシンプルなもので、秘密裏に行われました。

ザカリーは王に呼び出されました。王は衰弱しきっていて、顔には死の影が見えました。王は「死ぬ前にやるべきことがある」と話し、ザカリーに公爵位を与えることを告げます。公爵という地位は王族か開国の功臣のみが持っていました。しかし公爵位をもっている功臣は前の時代にいなくなり、今残っている公爵家は王家の直系家族のみで、彼らは政治に参加していません。

ザカリーは王族と結婚したわけでもなく、開国の功臣でもなかった。ましてやいま勢いのあるザカリーにその地位を渡すと、彼に悪い心があればセブランを飲み込むことだって可能でした。しかし、王はザカリーはそんなことをする性格ではないと信じていました。父親らしいことができなかったため、息子二人も失うことになってしまったが、残っている子供たちまで失う訳にはいかないと王は思っていました。

王はオデリーを王位につけると話します。アルベルはまだ幼く、残っているゴティエの妃は従順な性格をしている。しかし、問題なのはアルベルがカスティヤの王女と婚約している事でした。幼いアルベルはもちろん、従順なゴティエの妃では王の側で支えるべき摂政として不十分なので、カスティヤに飲み込まれる可能性が高い。

摂政(せっしょう)…成年に満たない幼い王が即位したときに、かわりに政務を執り行う立場の人。

カスティヤと上手に距離をとるにはアルベルが成長するまでの時間が必要でした。そこで王はオデリーを王位につけ、ザカリーにはその側近として守って欲しいと願いました。伯爵ではなくもっと高位の公爵という立場で。

オデリーに王位を与えれば他の王女たちの面倒も見てくれるので安心です。そしてザカリーに公爵位を与えるなら今しか無かった。オデリーの即位後では臣下が反対するが、老いて息子を失って狂った王の言葉なら聞くだろう。ザカリーは王に「全力で次期国王を守る」と誓いを立てました。

そうしてザカリーは公爵となり、オデリーは王位継承者となった。貴族たちははじめこそ反対したが、やがてオデリーの夫となって彼女を操ろうと画策し始めます。しかし、オデリーはアルベルを養子としてむかえました。アルベルの母親の妃も城に留まれるようにして、アルベルを教育して内宮の仕事を任せました。

ザカリーの叙任式には妊娠中のビアンカは出席できないため、領地から愛が込められた書信でザカリーを祝福しました。ビアンカは友人として、ジャコブのことによる同盟者としてオデリーにも祝福の書信も書いていました。

オデリーにビアンカからの書信を渡したザカリーは「殿下は良い聖君になられます」と話しました。

「公爵の考えか?」

妻の考えです」

オデリーはビアンカを信じていました。ビアンカがオデリーを信じてジャコブのことを知らせてくれなかったら、今この立場にオデリーはいなかった。オデリーはビアンカと、彼女の信頼する夫のザカリーに感謝しました。

公爵となったザカリーは領地に戻りました。ザカリーを祝う贅沢品が領地に集まり、ビアンカは浮かれていました。箱を並べて見て回るビアンカの様子を、ザカリーははらはらしながら見守り、ビアンカが一歩歩くたびにザカリーは心配しました。それを見ていたイボンヌは動くのは良いが姿勢に気をつけるようビアンカに注意します。

戦争が終わったあとにヴァンサンがビアンカを診ましたが、ビアンカは流産しても不思議ではない状況でした。流産しなかったのは子供がそれだけ強靭だったから。息子なら希代の騎士になるだろう皆が口を揃えて言いました。

ビアンカがイボンヌを救ったことで、彼女達の中は夫人と侍女ではなくもっと親密になっていました。イボンヌとガスパルの結婚式は春に行われる予定です。イボンヌとガスパルはビアンカの妊娠後にずらす予定でしたが、「春に結婚した花嫁は幸せになる」という話を聞いたビアンカが春に結婚できるよう推し進めました。

領民達はビアンカの妊娠を喜び、ブランシュフォールでは喜ぶあまり泣いてしまった。オデリーは妊婦に良い薬剤と宝石を贈りました。ニコラは彫刻したゆりかごをつくったが、子供のゆりかごと言うよりは王座に見えてしまうほど立派なものになりました。

カトリーヌはアルノーにやってきて、彼女が縫ったおくるみを贈りました。カトリーヌは夫の子供が欲しいのに、夫は後継者は急がないから大丈夫だと言うのだと、悩みを打ち明けます。カトリーヌが欲しいのは後継者ではなくマルソーとの子供でした。ビアンカはもうすぐできる、良いお母さんになる、と励ましました。そして、経験者として真面目に「今は大丈夫だとあまり気にしていないようですが、いざカトリーヌが妊娠したらダボビル伯爵はきっとあなたをおんぶして回ろうとします」と話しました。

ザカリーがそうなので、妻に重たい想いを持っているマルソーもきっとそうなのでしょうね。可愛いですね。

フランシスは大司教から枢機卿となりました。マルソーの父親であるヨハン枢機卿はフランシスに皮肉を言ったが、彼らは会話するうちに「そういえば神の返事がきていない」という話題になります。

神の啓示を受けた聖人が、神の望む未来を達成すると神は奇跡を起こし、聖人を祝福します。空に紫色のカーテンのような雲を浮かべたり、冬に花が咲いたり、夜空が真昼のように光ったり。しかし、特にそういったことはありません。ザカリーの死を防ぐことではなかったのか、ザカリーが達成すべきことが他にあるのか。とにかく聖人と連絡を取り合うため、大司教をアルノーに派遣することになりました。

ビアンカの元に法王からの書信が届きました。アルノーに大司教が派遣する報告も含まれていましたが、ビアンカが気にしたのはそこではなかった。達成した際に見られる奇跡についてでした。ビアンカもザカリーもそんなものは目にしていなかった。

またアラゴンとの戦争が起きてザカリーの命が危険になるのでは、とビアンカは不安になります。ザカリーは子供を産むまで決して領地を出ないことを約束しました。アラゴンは今回の戦いで暫く動けないだろうし、何より協力者のジャコブがもういないので手が出しづらくなっています。

ビアンカが妊娠して半年が経過しました。その頃には子供はお腹の中で動き回るようになり、びっくりして夜起きてしまうことが多々ありました。寝不足で、しかも腰も痛く、ビアンカはベットで過ごすようになりましたが、イボンヌとガスパルの結婚式には出席しました。

アルノー城の晩餐会場を結婚式場に使わせてもらうことになり、そのおかげでイボンヌはいつもより綺麗に着飾ることが出来ました。しかし、平民であるために高価なベールはありませんでした。用意を手伝ってくれた女中たちがそれを残念に思っていたけれど、そこにビアンカが訪れます。花嫁の待合室に来るのは親しい友達か家族だけなので、ビアンカの訪問にイボンヌは感激しました。ビアンカは手作りのレースのベールをイボンヌに贈りました。オデリーさえ持てないような華やかで美しいレースでした。

ビアンカは待合室を退室して、待っていたザカリーと合流しました。サプライズでプレゼントしたかったビアンカは、イボンヌがビアンカの部屋を退室する合間をぬって制作していました。最後は時間が足りなくてザカリーと過ごすふりをしてイボンヌを追い出したほどです。目的を達成できて満足しているビアンカに、「たまに君は俺よりイボンヌを気にしているようだ」とザカリーが言いました。

ビアンカはそんなザカリーに手を伸ばして頬をつねります。

「あなたが本当はこんなに可愛い人だということを、私だけが知っているのが大好きです」

結婚式では手を振る余裕さえあるイボンヌに対して、ガスパルはずっと緊張している様子でした。誓約書を書いたにも関わらず信じられないのか、イボンヌの手を握って、とうとう涙ぐんだガスパルに、ソヴールはワインを吹いて、ロベルは顔をしわくちゃにして、ヴァンサンは顎が外れるくらい口を開けました。

ザカリーは功績を称え、ガスパルに男爵位と領地を与えました。騎士家にうまれ、自分も騎士になるべく孤軍奮闘してきたが、その結果男爵位を贈られて、ガスパルは喜びました。しかし、アルノーでやることがあるので領地をもらうのは辞退しました。領地のない爵位は名前だけの爵位なのでなんの意味ももたなかったが、イボンヌもガスパルの隣でそれに同意しました。ビアンカのそばで侍女として働き、のちは子供の乳母になりたいと望んでいました。

ビアンカはそれを許可して、自分が幼い頃乳母を無くしてしまったような悲しみを子供に与えないでと話しました。ビアンカとイボンヌは主従関係ではなく、一生を共にする親友でした。

ガスパルに与えた領地はひとまずアルノーが管理することになりました。ビアンカとザカリーは退席して部屋に戻ります。ベッドに寝転んだビアンカは自分達の結婚式を覚えているかとザカリーに聞きました。ザカリーは覚えていたが、ビアンカは自分が泣いていた記憶しか無かった。

子供が産まれたらもう一度式をやるかとザカリーは聞きますが、ビアンカは断ります。騒がしいのは好きではないし、思い出は他に作ればいい。ビアンカはザカリーの腰に腕を回して眠りにつきました。ザカリーはビアンカの背を撫でていると外から微かな叫び声が聞こえた。ソヴールが池にでも落ちたのでしょう。ロベルが小言を言う声も聞こえました。

ビアンカの出産日がやってきました。痛みで苦しんだビアンカは準備された産室に入ります。ザカリーは何も手につかず、外を落ち着きなく歩いたが、産室からビアンカの苦痛に満ちたうめき声と悲鳴が聞こえてきました。

陣痛が長く続き、産婆はザカリーに万が一の時の話をします。決断を求められたザカリーは「何が起こってもビアンカだけは助けろ」と命じます。すぐに破水の知らせが入り、産婆は産室に戻っていきました。部屋の前でうろうろしていたザカリーは神に祈りました。どうかビアンカが無事でありますように。

悲鳴が止まり、静寂のあとに子供の泣き声が響いた。イボンヌが明るい顔で出てきて、「お嬢様です!」と報告しました。ザカリーはすぐに部屋に入り、女中に支えられているビアンカを見つけました。子供を産んだビアンカより、ザカリーの方が疲れた顔をしていることをビアンカはからかいました。

子供が綺麗に包まれ、産婆からビアンカが受け取ります。

ザカリーはこれまでずっと一人でした。ザカリーは涙を流し、ビアンカはザカリーの頬に手を伸ばし、ザカリーはビアンカの手に顔を埋めました。

子供の誕生を2人が喜んでいる時、真っ白な光が2人をつつみ、雲の向こうからラッパの音が鳴りました。神の奇跡です。そこでようやく、子供こそが神の望んだものだったと理解しました。回帰した時にビアンカが一番最初に望んだのは「ザカリーの後継者」でした。神の答えはすぐそばに最初からあったことに気づきました。そして、どうして選ばれたのがザカリーではなくビアンカだったのかも理解しました。

過去でビアンカはザカリーを嫌っていました。なのでザカリーが未来を見ても、自分のことを嫌っているビアンカの拒絶に耐えることができず、未来と同じように距離をとり、同じことを繰り返すだけだったでしょう。だから神様はビアンカを選んだのだとようやくビアンカは理解しました。

ビアンカはザカリーに娘を渡しました。泣かないか心配するザカリーに、泣いたらなだめればいいと話します。ビアンカは娘を抱くザカリーを見て神に感謝しました。ビアンカは自分にふりしきる不幸を避けるのが神の意志だと思ったが、そうではなく、自ら自分の未来を勝ち取ることこそ望んでいたのだと思いました。

23章 終章

ヴィクトル二世が冬を越えられず崩御され、オデリーが女王となった。アラゴンにはジャコブとの密約をつきつけ、賠償責任を問いました。ザカリーは使臣としてアラゴンを訪れました。アラゴンは聖人であるビアンカと敵対するつもりはなかったので受けいれるしかありません。こうして終戦交渉を終え、平穏が訪れました。

それからオデリーが王位について15年。16歳になったザカリーとビアンカの娘のアレクサンドラは、短く切った銀髪を揺らして走っていました。途中で大司教のトーマスにぶつかったが、トーマスはアレクサンドラが生まれた時から知っていたので彼女のワガママな姿も可愛かった。

枢機卿が派閥争いをしている間、法王がアルノーに送る大司教にトーマスを選びました。まだその時は司教でしたがトーマスはどこの派閥にも所属していませんでした。誰の敵でも味方でもなく、神の声に耳を傾ける者。そんな者がアルノーに行くべきだと法王は言いました。

数多くの枢機卿が自分の派閥に入れようとトーマスに連絡を取りましたが、トーマスは全て無視しました。そうして連絡が途絶えたましたが、今度はトーマスに圧力をかけてくるようになっていました。

アレクサンドラは元気に育ちました。神の意思ではあったが、産まれたのが息子ではなく娘だったので教団の人々も最初は気に留めていませんでしたが、そうはいかなくなってきたのです。

殴り合い、剣術、乗馬、全てにおいてアレクサンドラは秀でていました。アレククンドラが7歳になる頃にはアルノーにいる15歳の男子で彼女に勝てるものはいなくなり、13歳で騎士爵位を受け、16歳で父の後を追って戦争に出ました。アラゴンとの和平協定を結んでから10年以上経過しているため、情勢も不安定になってきて戦争も度々起こっていました。

イボンヌはアレクサンドラの武勇伝を聞く度に婚期が遠のくのを心配していました。オデリーが女王になってから貴族もまた変わり、女が爵位を継ぐことも多くなっていました。アルノー公爵家でもアレクサンドラを次期公爵としていました。

アレクサンドラと結婚すると公爵の夫となれますが、そのためには相手も同等程度の身分が必要です。おまけに銀髪で薄緑色の瞳を持つ美人でした。アレクサンドラは男性から人気がありましたが、そんな彼女を最近追いかけているのがシリル王子でした。

「乳母!」と言ってビアンカとイボンヌのいる部屋に入ってきたアレクサンドラは、「また乳母がうわ言を言っている」と話しました。最近アレクサンドラを追いかけているシリル王子はアルベルの息子です。アルベルは政治に関心がなく、彼が18歳の時にカスティヤの王女と結婚して、24歳の時にシリルが産まれました。アルベルはシリルの代父にザカリーを望み、それを叶えるために首都に行った時がシリルとアレクサンドラの初めての出会いでした。

代父(だいふ)…洗礼式に立ち会い、神との契約の証人となるべき人。わかりやすく言うと宗教上の後見人です。女性を代母(だいぼ)と言います。

乳母の息子であるギャストンのあと初めて見た赤ちゃんが不思議だったアレクサンドラが見下ろしていると、シリルはその髪を強く掴みました。あまりにも強い力だったので、当時腰まで長かった髪を切ることになったほどでした。しかし、それを口実にアレクサンドラはそれ以降髪を伸ばさないでいました。

アレクサンドラが結婚を渋っている間にシリルは大きくなり、10歳になったらプロポーズするだろう、とイボンヌは話します。13歳も離れているとアレクサンドラが言うと、ザカリーとビアンカもそうだと言いました。

一緒に聞いていたビアンカは長くなる話を断ち切るために、何か用があったのかとアレクサンドラに尋ねます。アレクサンドラは自分が作った花冠をビアンカの頭に乗せました。ビアンカは鏡でそれを見て、「綺麗」と言って喜びました。授業をさぼったことを注意するべきだとイボンヌが言うけれど、ビアンカは気にしていなかった。

「私もやりたいことだけやってきたじゃない。この子もそうしていいよ」

自分を信じてくれる母親に、アレクサンドラは自分より小さいビアンカを抱きしめた。

「お母様が私のお母様でとても嬉しい。よかった。私は幸運だよ」

ザカリーがやってきたが、彼もビアンカと同じように、したいようにすればいいと話しました。アレクサンドラは両親に「愛しています」と言って頬にキスをして部屋を出ていった。イボンヌはそんなアレクサンドラの後を追いました。

ビアンカが毅然とした態度で居られるのはザカリーのおかげでした。アレクサンドラが初めて戦場に出た日、ビアンカは二人を見送りました。父親の後を追って馬を走らせる娘の背中が見えなくなるまで城門の前で静かに見守り、そっと涙を流しました。神の意思として偉大なことを成し遂げるのだとしても、心配しない訳ではありませんでした。

しかし、ザカリーはいつもビアンカに対して忠実で誠実でした。ザカリーと一緒にいた時間がビアンカに勇気を与えました。今では過去のそのすべてのことを笑いながら回想することができるほどでした。ビアンカはそれだけ今が幸せでした。

アレクサンドラ・ド・アルノーは英雄と呼ばれた父親の強靭な姿をそのまま継いで、優れた武人となりました。神に選ばれた彼女は大陸を統一し、13歳年下のシリル王子と結婚しました。セブラン王家でもアレクサンドラが王妃となるのを予想していましたが、シリルは予想外の行動を起こします。

二人が結婚して5年後、アレクサンドラが34歳、シリル21歳の時に、シリルは王位につき、彼はそのままアレクサンドラに王位を譲ってしまいました。そうしてアレクサンドラはアルノーの領地とセブラン王国をおさめることになりました。

話題に事欠かないアレクサンドラでしたが、彼女の母親である聖人ビアンカも話題のひとつでした。名を馳せた芸術家ニコラを後援し、彼の能力を開花されました。ニコラはビアンカとザカリーの彫刻を多く作りましたが、特にビアンカの彫刻は多かった。ニコラの代表作である女神像がビアンカの顔と酷似していたことを考えると、後援に応える気持ちだけでは無かったのでは、と学説では唱えられましたニコラの彫刻からインスピレーションを受けた芸術家たちは同様に、ビアンカを油絵や壁画、小説などで残しました。

ビアンカ・ド・ブランシュフォールはザカリー・ド・アルノーの妻であり、領主である彼が出征した際にアルノー領地を守るために孤軍奮闘する、名誉を知り、気品を持った女。 聖人に選ばれ、神の意思を守るために努力を惜しまず、その後も領民と周辺の人々のために後援と支援を惜しまなかった女性。それがまさに、ビアンカという女の人生だった。

5巻・後編を読んだ感想

本編完結しました!なぜ聖人として選ばれたのがザカリーではなくビアンカだったのかというところもスッキリ解決しましたね。ただ、まだ明かされていないことも多いので、次の外伝についてのネタバレ記事を更新したのちに、考察記事をアップしようと思っています。ココって結局なんだったのー?みたいな疑問があったらコメントやTwitterのDMなどに投げておいてもらえると私なりの回答になりますがその時に合わせて掲載します。

次回は外伝!

最終話から1年後くらいの時間軸でのお話になります。アレクサンドラ1歳です。

みんな可愛いので楽しみにしていてください。

「結婚商売」韓国の原作小説ネタバレ感想 |外伝結婚商売(결혼 장사)の韓国の原作小説にある本編完結後の外伝のネタバレ感想です。 作者・KEN 作画・ENA ネタバレ記...

 

ABOUT ME
いり
異性愛・同性愛に関係なく読みふけるうちに気づいたら国内だけではなく韓国や中国作品にまで手を出すようになっていました。カップルは世界を救う。ハッピーエンド大好きなのでそういった作品を紹介しています。

POSTED COMMENT

  1. 瑠璃 より:

    先日3巻10章についてDMさせていただいた瑠璃です。
    いり様のおかげ自分でも原作小説を読むことができまして、夜な夜な睡眠時間を削って5巻まで一気に読破しました。
    ザカビアが貴すぎて、とっても幸せな時間を過ごせました…!本当にありがとうございます。最初は漫画で連載している先まで読むか迷っていたのですが、原作を読んでいるうちにとてもじゃないですが途中で止められなくて、どんどん読んでしまいました笑。自分ではよく分からなかった部分も、いり様の翻訳記事のおかげで補完できて、より理解を深めることができました。お忙しい中素敵な翻訳をありがとうございます。
    二人のすれ違い片思いからの最強カップルへがとても素敵で、結婚や子孫を残すことが主題に含まれながらがも、オデリーやアレクサンドラの様に結婚についての新しい形が出てきて、とてもすごい小説(語彙力がなくて単純な表現ですみません)だと思いました。
    あと外伝1巻、読み終えてしまうのが惜しくもありますが、結婚商売の世界を堪能したいと思います。

    • いり より:

      瑠璃さんコメントありがとうございます!
      結婚商売は不仲な夫婦のやり直しというだけでなく、もっと話が壮大で、私も読んでいてもとても感動しました。そして、その感動を共有できたことが嬉しいです。多くの人に結婚商売を深く楽しんでもらいたいというのが私の希望だったので、こうして瑠璃さんのように原作まで読破される方がいて、ブログをやっていてよかったと改めて思います。こちらこそありがとうございます!

  2. 匿名 より:

    やってしまった…。
    続きが気になってググったらこちらのブログを見つけてしまい、一気に読んで結末を知ってしまいました。

    でも、ありがとうございます。
    原作訳の物語が、マンガでどのように描かれるかな?何かアレンジも入るのかな?という別の楽しみもできました。

    ジャコブ推しというほどではないのですが、彼は惜しい人物として私の記憶に刻まれました。

    ゴティエ殿下よりは明らかに高い素質と能力を持っている(英雄色を好むともいいますしw)と感じられるだけに、彼の結末も良い方に変わってくれる期待もあったのですが、そこに落胆したのも含めて面白かったです。

    ジャコブの劣等感と歪んだ欲望は育ちのせいですから、そこはどうにもならなかったということにでもしておきます。

    彼が良くなってしまったら敵のいないつまらない物語になってしまいますもんね。

    • いり より:

      匿名さん、コメントありがとうございます!
      ゴティエ殿下よりジャコブの方が優れてはいそうだと私も思ってしまいました。確かにジャコブの結末が良い方向に向かってしまうと、物語に悪役がいなくなってしまいますね…
      ジャコブについてのコメントがいただけて嬉しかったです!ありがとうございました!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です