コミカライズ連載している「永遠なる君の嘘」の韓国原作小説を読んだのでネタバレ感想を書いていきます。韓国語は不慣れなので翻訳が間違っていることもあります。
(間違っているところを見つけた場合はtwitterのDMでコッソリ教えてください…)
永遠なる君の嘘(영원한 너의 거짓말)
原作:jeonhoochi
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1章 脱獄囚
モンテ島に移送する蒸気船ヴィヘス号にて、脱獄囚であるローゼンは「嘘が上手いのか」と尋ねられます。ローゼンにそう聞くのは、帝国最高の飛行部隊を率いた戦争英雄であるイアン・コナーでした。
「いいえ、全然」
「資料にそう書かれていた。詐欺と懐柔、説得に長けており、知能が高く、弁舌が優れている。 巻き込まれる恐れがあるので、対話の際に注意が必要」
「私は嘘をついたことなんてない」
こんな英雄に会えて、ローゼンは感無量だった。ネズミの子はネズミ。どうせネズミとして生きていくなら有名なネズミになった方がいい。そのほうが面白いこともあるのだとローゼンは思いました。
イアンに名前を聞かれ、「ローゼン・ウォーカー」と答えます。しかしイアンは「書類では別の名前になっている」と言うので、仕方なく「ローゼン・ハワーズ」と答えます。けれどローゼンにとって、自分はローゼン・ハワーズではなく、ローゼン・ウォーカーでした。
原作小説だとここでローゼンの経歴の説明文章が入るのですが、文章だとややこしいので以下にまとめます。
ローゼン 17歳 |
50年の刑を受け、ペリーヌ女性刑務所に収監 |
ローゼン 18歳 |
絶壁を裸で降って脱獄するが3ヶ月後に逮捕。25年の追加刑を受けてアルカペズ刑務所に収監 |
ローゼン 23歳 |
スプーンで地面を掘ってアルカペズ刑務所を脱獄 |
ローゼン 24歳 |
再び逮捕 |
ローゼン 25歳 |
地上最悪のモンテ島に収監されるために船で移送中(現在) |
イアンはアルカぺズでスプーン一つで地面を掘って脱獄したというローゼンの噂が本当か尋ねます。
「もちろん。そのスプーン一つ得るために脇と股間から腐ったチーズの匂いがする太った刑務官と百回も寝なくちゃいけなかった。 あいつのお腹があまりにも出てたから、バックで出来なかったのが本当に残念。顔を見ないでやれたらマシだったのに」
「5年かかったけど出る時にはスプーンが親指の爪みたいに短くなってた。残念ね。もう少し長く残っていたら、あいつの尻に記念で入れてくるつもりだったのに」
ローゼンは軽口を叩くけれど、ずっと不細工ばかり見てきたので、イアンのようなハンサムと会えて気分が良かった。
戦争英雄のイアン・コナー。飛行機が飛ぶと、イアンの顔が写ったビラが空から雨のように降りそそぐ。カーキ色の制服の上に赤いマフラーを巻いて、ゴーグルをかけた若いパイロット。イアンの声が流れる放送が響き、魅了されたように空を見上げる。
『私たちは勝利するでしょう。諦めないでください。戦争は終わります。帝国民よ、安心してください』
安い紙とインクでも、音質の悪い軍隊用のスピーカーでも、イアンの魅力を失わせることはなかった。政府は人を惑わすのが、単純だが戦争において必要なことだと知っていました。敵国がいくら降伏しろと放送しても、相手は司令官の老人で、こちらはイアンだった。不安と絶望の中で、ハンサムな司令官が自信満々で笑う姿は帝国民を勇気づけた。ローゼンも飛行機から落ちてきたビラを拾ってきては台所に飾っていました。
イアンはローゼンに罪状を尋ねますが、ローゼンは「私は無罪よ」と繰り返します。そこへイアンの部下であるヘンリーがやってきます。ヘンリーは30を過ぎたくらいのイアンより4、5歳くらい年下で、ローゼンと同じ年頃に見えました。ヘンリーはどの囚人と面談しているのか知らなかったのか、ローゼンを見て「アルカペズの魔女!」と驚きました。
脱獄が困難だと言われているアルカペズを最初に脱獄したのは魔女でした。この作品では魔女や魔物が存在します。しかし、数十年前に蒸気機関車が発明され、文明が発展するにつれて、魔女は数が減少してしまいました。
ローゼンは長年の栄養失調でやせ細った体と、日光に浴びていない白い肌をしていて、おまけに鎖に縛られていましたが、それでもヘンリーはローゼンを警戒していました。なぜなら、ローゼンは17歳の時に夫であるヒンドリー・ハワーズを殺した殺人犯だったからです。
ローゼンは自分を「夫を愛する良い妻だった」とし、犯人は強盗だと主張しました。夫のヒンドリーには敵が多かったから。裁判で何度も繰り返した言葉をもう一度イアンとヘンリーの前で涙を流しながら訴えるけれど、イアンは気にも止めていません。
「人は嘘をつくが証拠は嘘をつかない」
たとえ夫を愛していたとしても、小柄で自分より大きなヒンドリーを倒すのは難しそうに見えても、実際にローゼンは誰も脱獄するとは思っていなかったアルカペズの脱獄に成功しています。イアンは手錠を引っ張ってローゼンを強引に立たせ「ついてこい」と歩き始めました。手足を繋がれているためふらつくローゼンを反射的にヘンリーが支えますが、ローゼンの悪臭にうんざりして押し出し、ローゼンがそのまま倒れてしまいます。
囚人でもできるかぎり怪我をさせるな、とイアンが注意しますが、ヘンリーはローゼンの悪臭を「戦場で腐ってく死体もこれよりは臭くなかった」と主張します。しかしイアンは取り交わず、必要以上な好意を持つことも悪いが、必要以上の悪意を持つことも同じだも話しました。
ヘンリーはそれまでデッキで行われていたパーティに参加し、いい香りのする場にいたため、余計に気になったようですね。今回船で移送されているのは全員女の囚人だったので、モンテ島を観光しようと富裕層の人々も乗り込んでいました。しかし、観光を楽しもうとする人々も、さすがに囚人と対面するほど勇気はないので、島につくまではパーティを開いて過ごしているようですね。
イアンはローゼンに手を差し出し、部下にかわって謝罪します。ローゼンはその手をとって立ち上がり、再び歩き出すイアンの後ろを睨みつけました。
ローゼンはイアンに好意を持っているけれど、モンテ島に着く前に脱出する必要がありました。だから、彼が善良で良い人だとしても、ローゼンと敵対しない理由にはなりません。ローゼンは今回も自分が勝利すると決意を固めました。
デッキに上がるとイアンはヘンリーに何かの肉の塊を持ってこさせ、それを海に投げると、あっという間に黒い海の中にひれがいくつも現れ、歯がぶつかり、肉を噛みちぎる音が聞こえ、血が滲んで海の色が変わりました。
海には巨大なサメ、クラーケン、人喰いクジラがいる。そのどれかなのか、それとも他にも学会で報告されていない様々な海洋魔獣たちなのか。座り込んでしまったローゼンをイアンは起こしながら、それがどれほど大きくて荒々しく、素早く、人肉が好きであるのか説明しました。イアンはローゼンの目の前でベルトから鍵を外して目の前で揺らします。それはローゼンの鎖の鍵でした。イアンは最初からローゼンの視線がどこに向かっているのかを把握していました。
2章 屈辱
ローゼンは囚人達がいる部屋に戻されました。部屋と言っても換気口もない倉庫のような所で、そこに30人ほどの女性囚人たちが足の踏み場もなく詰め込まれています。
アルカペズで一緒だったマリアと偶然乗り合わせており、彼女はローゼンを見ると「どうだった?」とイアンとの面談について聞いてきました。マリアは自分は老いていて、ローゼンが若いからという理由で何か行動をしてみろとアルカペズの時も背中をおしていました。彼女の助けもあってローゼンはアルカペズで5年間地面を掘り続けることができたのです。
マリアはローゼンより魔女という言葉が似合う人だった。監房の外を支配するのが看守なら、中を支配していたのがマリアです。マリアに目をつけられた人は刑期を終えることができず監房の中で死んでいきました。ローゼンはマリアのお気入りだったが、それはすでに1度脱獄していて、さらにアルカペズでは便器の下に穴を掘っていたのがマリアにバレたから。
諦めず行動するローゼンの若さがまぶしく思えたのか、自分にはできない行動をするローゼンを面白く思ったのかなと個人的には思いました。
マリアはローゼンに3度目の脱獄の意思があることがわかると、どこかから手に入れたタバコを1本ローゼンにくれます。ヒンドリーと一緒にいた時は彼がヘビースモーカーだったため、その匂いが嫌いでしたが、今ではローゼンもタバコを美味しく感じるようになっていました。
ローゼンはマリアに「イアン・コナーは戦争で功績を立てたのにどうしてこんな任務をしているのだろう」という疑問を口にします。マリアは「どこか壊れて左遷されたんじゃない?」と返しました。言葉通り腕や足を負傷したようには見えなかったが、マリアは「壊れるのは体の事じゃない」と言います。
ローゼンとマリアが話していると突然ボールを床に跳ねさせながら遊ぶ上流階級の少女が現れました。ローゼンが話しかけると少女は「ライラ・リービル」と名乗り、ここに来たのはローゼン・ウォーカーに会うためだと話しました。
ライラの祖父がこの船の船長であるため、自分はローゼンに会えることを話したけれど周りの子供たちは信じてくれなかったので、祖父に内緒でやってきたという事でした。
ローゼンが知らない間にライラは度々ここに訪れていたようで、マリアが持つタバコもライラから手に入れたものでした。
自分がローゼン・ウォーカーだと明かすとライラは興奮しながら色々な質問をし、最後に「本当に魔法が使えるの?」と聞きます。ローゼンは魔法を見せるかわりに質問をライラにしました。
イアンと親しいのか聞くと、無愛想で厳格でライラにあまり興味がなさそうだが、ヘンリーが言うには表現できていないだけでライラを大事にしている、と答えました。
結婚しているのか、もしくは婚約者か恋人はいるのか聞くと、結婚はしていないし婚約者もいない。周りから早く結婚しろとせがまれているけど本人はあまり考えていないと思う、と答えました。同情心が旺盛な人なのかと聞くと、同情心について聞き返されました。答えにつまるローゼンの代わりに、「誰かを可哀想だと思う心だよ」とマリアが言います。
雨に降られた子犬を家に入れること。熱が出た子供のそばで手を握って祈ること。涙を流す人と一緒に泣いてあげること。そのような気持ちだとマリアが話すと、ライラはそれは愛だと答え、イアンは誰かを愛するような人ではない、とライラは続けます。ローゼンは自分がが泣いて見せても動揺しなかったイアンの灰色の瞳を思い出しました。
ローゼンは約束していた魔法を行うため、ライラからコインを受け取り、それを握ったあとに手のひらを開いて見せました。コインは手のひらから消えていました。コインがなくなったとはしゃぐライラに手を伸ばして、彼女の耳元で何かを取り出す動作をして再びコインを見せました。ローゼンは本物の魔法でも使ったかのように自信満々に笑います。
「さあ持って行って。幸運のコインだよ」
これが幸運のコインだという秘密が守れたら、夕方にはコインが金貨に変わっているはず、というほらも吹いた。
マリアやライラが同情心を「愛」だと言いましたが、ローゼンにとっては違いました。男たちは可憐な女が好きだった。外見はあまり重要ではありません。綺麗で堂々とした女より、涙にまつげが濡れている女性に惹かれる。頼りない、限りなく無力な女性をペットのように愛でて、気の向くままに振り回して踏みにじる。それがローゼンの考える同情心でした。
だから、ローゼンは証明をすればよかった。彼らに絶対勝てないと思わせて、ローゼンがどれだけ征服感を抱かせる女であるかということを。実はそれがローゼンの専門でした。体をすくめ、涙をうかべ、手足を震わせる可哀想な田舎ネズミになる。ローゼンは愛より征服感の方がはるかに甘く中毒性の強い感情だと信じていました。そしてそれは愛より得やすい感情だった。
ローゼンが使ったのは魔法ではなくただの手品でした。しかし純粋なライラはそれを魔法だと信じています。子供が純心で騙されやすいことをローゼンは知っていたし、それを利用する心算もローゼンにはありましたが、ライラにひどいことをするつもりはなく、質問をしたかったようですね。船から脱出するにはまずイアンを攻略する必要があるからでしょう。
ヘンリーは囚人の移送なんて頭の痛い仕事だと嘆きます。おまけに怪物のいる海域へ進む船だというのに観光客が乗っている。イアンは船に乗ってからほとんどを機関室で過ごしていました。戦争が終わってから、赤と炎を見るだけで気分が悪くなるのでヘンリーにとって機関室はうんざりするほど嫌な場所でした。
魔法がなくても空を飛ぶことのできる新しいエネルギーに心踊ったこともあった。魔女ではなくても空を飛ぶことのできる世界。そうして魔女を思い出してからヘンリーはローゼンが頭に浮かびます。アルカペズの魔女はリオリトン出身だった。
リオリトンは戦争の最中、砲撃によって廃墟となった都市です。そこに残ったのは黒く焼けた建物の残骸と、地中に埋もれて収拾できなかった死体だけ。リオリトンはイアンとヘンリーの故郷で、士官学校に通い、幼い頃を過ごしました。初めて飛行機に乗って空に舞い上がったところ。ローゼンは脱獄してリオリトンを離れていたため、砲撃をまぬがれていました。
運のいい女だとイアンに話します。就寝死刑を受けた囚人だとしても、脱獄によって有名になり、こうして戦争英雄であるイアンに移送されている。
「ヘンリー、モンテ島だ。それがどういう意味なのか分からないのか」
モンテ島は死刑を受けるより酷い場所だった。帝国はローゼンを死から救ったのではなく、死より恐ろしい場所へ押し込むことに決めたのでした。重労働と拷問、飢えと劣悪な環境。モンテ島の囚人達は刑期を満たさず惨めな死体になる。
ヘンリーはイアンの言葉を聞いても「それでも生きているじゃないですか!」と声を荒らげました。ヘンリーは時々感情を激しくする時があった。戦争が終わった後にできた習慣でした。イアンは主治医が助言したとおりに、ヘンリーの話を遮ることなく黙々と話を聞きます。
ヘンリーはイアンの功績から考えると要職につくべきだと話します。しかし、イアンは嫌われていました。主に、軍とリオリトンの生き残った人々に。熱烈に支持していたイアンがリオリトンを守れなかったため、廃墟から九死に一生を得た人々はイアンを非難しました。そこで軍は、同じリオリトン出身の魔女であるローゼンをモンテ島に入れる所を見せつけたいのでしょう。完璧な英雄に汚点があってはいけないから。
「これが終わったらちょっと休んで気楽に過ごしてください。卿の前には輝く道だけが残っています」
イアンにとってそれは負担となる言葉でした。しかし、口を挟まないという主治医の助言に従い、イアンはヘンリーの言葉を否定しませんでした。本人は否定するけれど、酷い戦争でヘンリーを壊れていました。3万5千フィートの上空から飛び降りても笑っていられた才能ある若いパイロットはもういません。そこには高いところに立つと動悸がしてしまい、3階建ての建物にも上がれない傷心軍人がいるだけでした。
ヘンリーを壊してしまったのは結局イアンです。イアンが率いた編隊はヘンリーを除いて全て戦死してしまいました。多くの人が口を揃えてイアンのせいではないと言いましたが、イアンにとっては全く何の慰めにもなりませんでした。
リオリトン。イアンが守れなかった都市。目の前が真っ白になって耐えれない頭痛が押し寄せる前に、イアンは目を閉じて任された任務に集中します。
直接対面したローゼンは軽薄でお喋りだった。しかし賢いのか馬鹿なのか、聡いのか鈍いのか、イアンが想像してたよりはるかに奇妙な人だった。イアンはまるで水槽に入れたヤドカリを観察するかのようにローゼンを観察していた。リオリトン出身でありながら今も生きている人。その日、イアンが飛行機の向きを変えても生き残った人。それだけでイアンが観察する理由は十分でした。イアンが破壊した都市で偶然生き残った人を見守ることは、イアンにとって奇妙な安定感をもたらしました。
ヤドカリを捕まえて持ち上げ、存在もしない誰かに見せながら子供のように叫びたい気持ちだった。 ほら、生きてるじゃん。 俺はリオリトンを──
脈絡なく続いた考えの末、イアンは当惑した事実一つを思い出した。
そろそろローゼンと面談する時間で、ヘンリーはローゼンをイアンの部屋に案内していたことを報告します。そこで、イアンは自分の部屋の机が片付いていないことを思い出して、慌てて部屋に戻りました。
3章 同類
イアンはローゼンと1日1度の面談を行い、海にはどのような危険生物がいるのか講義を行いました。ローゼンがいくら顔を綺麗に洗って胸元を見せたり、泣いて気弱な女のふりをしても、イアンは見向きもしなかった。それよりもローゼンが生意気な言葉を言っている方がむしろ興味を示していた。
しかし、なぜ50年も服役しなくてはいけないのか、という話になると2人の話し合いは平行線になってしまいます。ローゼンの隣の家では、妻を殴り殺した夫はローゼンほど重たい罰を受けていない。しかしイアンは、最初の裁判で罪を認め、模範囚となっていたら減刑や仮釈放の申請などもできたと話します。結局モンテ島への終身刑になってしまったのは自ら招いたことだとも。
しかし、ローゼンが最初の脱獄をしなければリオリトンと一緒にローゼンも砲撃によって死んでいました。面談は終わりだと切り上げるイアンに、ローゼンは自分とイアンが同じだと言いました。イアンは陽だまりの英雄で、自分は影の英雄だと。
ローゼンは敵国のタラスは得より損が大きくなるから退いただけで、帝国に残ったのは薄っぺらな愛国心だと皮肉を言いました。イアンの怒りを感じて、ローゼンはイアンが自分を殴ると信じていました。もしかしたら倒れたローゼンを軍靴で踏みつけるかもしれない。しかし、男の暴力には性的行為がつきものなので、痛みを我慢すればイアンの寝室に入ることができるとも考えていました。
けれどイアンは冷たく「ローゼン・ハワーズ」と突き放すように名前を呼んで話しました。例え名前が残らなくても国民のために命をかけて戦い、そして散ってしまった若い軍人達がいたことを。彼らを侮辱するべきではないことを。ローゼンの予想とは違った怒り方だった。イアンは面談はこれで最後だと言い、部屋の扉をあけます。
「実はこの海の上では鎖は必要ない。四方が地獄だから」
「…………」
「それにもかかわらず、お前は両手に足かせをはめて身動きもできないままここに立っている。それがお前の罪の重さだ。生きている人を世の中から消した罪」
同じ人から出たが、温度は全く違う声2つが頭の中で重なる。
『安心してください。誰もあなたを傷つけることはできないでしょう。空襲警報が鳴ったら電気を消して、地下室に降りて受信機をつけて放送を聞いてください。ただ待てばいいです。私はここで帝国の空を常に守っています。皆さんのために』
ローゼンはラジオから流れるイアンの声を聞きすぎていました。それこそ、彼からラジオのような温かい言葉が出るかもしれないと変な錯覚をしてしまうほどに。
部屋をそのまま追い出されたローゼンは、もう二度とイアンの部屋に入れないだろうと思いました。何か別の手を考える必要がある。そこへ、ヘンリーがローゼンを見つけてやってきて話していると、ローゼンの視界に監獄へ向かうライラが見えました。
「姪っ子は可愛いのね」
ローゼンの言葉に、ヘンリーが警戒して顔を固くしました。そして監獄へ向かおうとするライラを見つけてヘンリーは大声で叫びますが、その声に驚いたライラは両手を首に当てて人形のように固まってしまいました。驚いた拍子に何かが喉に詰まってしまったようです。
顔が真っ青になっているライラを見て、ローゼンはヘンリーに「乗客のための医者はいる?」と聞きますが、ヘンリーもパニックになって硬直していました。ローゼンは手錠を外してと催促し、動かないヘンリーを蹴飛ばして無理やり動かしました。
自分なら処置できると言い張り、「でたらめを言っていると思ったら撃って殺せばいい!」と叫ぶローゼンの声に我に返ったヘンリーがローゼンの手錠を外しました。ローゼンは習った治療法でライラを後ろから抱きしめて鳩尾に拳を差し込み、下から上へ何度か突き上げると、ライラの口から飴玉が飛び出ました。いつの間にか周りには人が集まっていました。
船長であるライラの祖父も来て、孫娘を抱きしめました。ローゼンは自分に近寄ってきた影がヘンリーだと思って、体を洗う水や食料を軽口で要求しましたが、「そうしよう」と返事をしたのはヘンリーではなくイアンでした。驚いたローゼンが「言ってみただけだよ。別に恩返しをしてほしくてやったわけじゃない」と言います。
「帝国軍はいつも命の代償を払う。たとえ君がモンテ島に閉じ込められる囚人だとしても」
イアンは囚人でも適切な報酬を与えると言いたかったようだけど、ローゼンにとっては結局良いことをしても囚人であることに変わらない事実がより明確に知らされただけだった。
イアンは再びローゼンに手錠と足の鎖をつけて、ローゼンが体を洗うために人をつけると言いました。そこへ、ライラの祖父であるアレックス・リービルが恩人に対するイアンの態度をきつく注意します。鎖を外せというアレックスと、外さないと言うイアンの話は完全に対立していました。
アレックス・リービル。元海軍提督でローゼンたちが乗っているヴィヘス号の船長です。今回の戦争の英雄がイアンなら、前回の戦争の英雄はアレックスで、学校に通えなかったローゼンでさえ知っているほどの有名人でした。
アレックスはまるで貴族の令嬢に接するように丁寧にローゼンを晩餐会へと誘いました。しかし、イアンが「殺人犯です」と言います。ラジオで聞いていた頼もしい声でそのような事を聞きたくなかったローゼンは、その声に被せるように晩餐会へ参加する旨を伝えました。
ローゼンは自分が思い描いていた幻想と違うイアンを見る度に腹が立って耐えられなかった。むしろ、イアンと合わなかったら良かったと思うほどに。イアンはローゼンの中で幻想の中の存在として残しておきたかった。帝国民みんなの、私たちの、ローゼンのコナー卿でいてほしかった。
1巻前編を読んだ感想
1巻は7章まであるんですよ…!本当は1記事でおさめたかったのに無理でした…。
ローゼンは現在自分の夫を殺害した罪を否定していますが、ここからどう話が展開していくのかがこの物語の肝になります。イアンがどう絆されていくのかも見どころです。
ひとまず前半であるここでは、漫画でも小説でもやはりライラは可愛いし、初期ヘンリーは嫌な奴って感じですね。
ローゼンとイアンに関してはまだ甘さも何もないのですが、少しずつ出てくるので…!
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「永遠なる君の嘘」韓国の原作小説ネタバレ感想 |1巻・中編永遠なる君の嘘(영원한 너의 거짓말)の韓国の原作小説1巻(中編)のネタバレ感想です。
※2022.12.20 記事の文章が長すぎ...