原作ネタバレ

「永遠なる君の嘘」韓国の原作小説ネタバレ感想 |1巻・中編

永遠なる君の嘘(영원한 너의 거짓말)の韓国の原作小説1巻(中編)のネタバレ感想です。

※2022.12.20 記事の文章が長すぎて読みにくかったので1巻後編としていた記事を2つに分割しました。

※2022.12.12 6章を掲載し忘れていたため、修正しました。

原作:jeonhoochi

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4章 コインの両面

ライラを助けたローゼンは乗務員によって風呂にいられました。普通の乗務員は囚人の入浴を怖がって手伝えないので、彼女たちは乗務員ではなくアレックスの部下なのでしょう。

ローゼンは暖かな泡に包まれながら孤児院にいた子供時代を思い出します。保母はいらいらした様子で、肌が赤くなるまでたわしで子供たちの体を擦り、少しでも動いたら殴りました。その時の記憶が強烈だったせいか、ローゼンには風呂を楽しむという気持ちが理解できなかったけれど、こうして温もりに包まれていると理解できるような気がしました。

ローゼンがうとうとしていると、外から小さな騒ぎ声が聞こえます。ヘンリーが押しかけているようだったので、ローゼンはシャワーカーテンを半分開けて要件を聞きました。

ヘンリーは乗務員に「船長の命令です」と言って彼女たちを浴室から追い出します。「ボディチェックでもするの?」とローゼンがからかうと、ヘンリーは「言いたいことを言ったら出ていく」と言ってローゼンが開けていたシャワーカーテンを閉めます。

ヘンリーが話したかったのはライラの事でした。しかしライラの話が出ると、堂々と立っていたヘンリーの影が半分に折れたのがカーテン越しに見えました。その姿は巨大な鉄の塊を操縦して空を駆け回った人とは信じられないほど、無力そうでした。

「あんた、本当にパイロットなの?」

「俺が撃墜した敵軍の飛行機は50機を超える」

ヘンリーは自分は帝国で2番目のパイロットだと自慢するけれど、ローゼンにとっては偉大なパイロットではなく、何かを怖かっている子供に見えました。

ヘンリーは重たい口を開いて、自分の姉であるライラの母親について話します。ローゼンはライラが孤児になった話なんて聞きたくなかったけれど、ヘンリーは構わず話しました。リオリトンへの砲撃によって、都市は滅び、そこに、ライラとヘンリーの姉はいたことを。

ヘンリーは名家の子息です。功績を立てているので軍での階級も高く、さらに空軍は歴史が浅いので上も少ない。それこそイアンくらいにしか頭を下げたことのないヘンリーは、囚人であるローゼンに自分の不甲斐なさを認めて感謝の言葉を伝えるのは、とても難しいことだったようです。

ローゼンはその時は最初の脱獄中だったので、そのあとアルカペズの牢獄の中で看守に新聞を見せられて知りました。ローゼンは文字が読めなかったけれど、写真を見て、リオリトンの崩壊を理解しました。

ヘンリーは「面白いことが何かわかる?」と聞きます。

「俺はそれを防ぐことができた。あの都市に姉とライラがいることを知りながら、俺はその爆撃を防がなかった」

ローゼンは聞きたくなかった。リオリトンは悪夢のような記憶しかない場所で、消えたと聞いても少しも悲しくありませんでした。むしろ、誰にもいえない開放感すら感じていました。けれど、それをヘンリーに言う訳にもいかず、「どうして?」と聞きます。

ヘンリーはイアンと飛行中、上空で敵国の飛行機が爆撃準備をするのを見つけました。しかし敵国の飛行機は2つの群れで、それぞれ行先はリオリトンとマローナ。リオリトンも大きな都市ですが、マローナは帝国の首都です。マローナが爆撃されてしまうと帝国は滅びてしまいます。イアンとヘンリーはマローナを守るという選択をするしかなかった。

イアンも自分の副官の家族がリオリトンにいるの知っていました。ヘンリーのことも、その姉のことも、ライラが生まれる瞬間も知っていた。そしてまた、自分の放送を聞いていたリオリトンの人々のことも。

人々は電気を消して扉を閉め、地下室に避難して子供の耳を塞ぎ、「大丈夫、コナー卿が私たちを守ってくれる」と言ったでしょう。それをイアンは知っていました。それを知っていて、イアンはどんな気持ちだったのだろうかとローゼンは考えました。

イアンを恨んでないかローゼンが尋ねると、ヘンリーは恨んでいないと答えます。あれは正しい選択で、仕方のないことだから。

ヘンリーは爆撃を受けたリオリトンに戻り、死体や街の残骸の中から毛布に巻かれたライラを発見しました。近くには子供の母親と見られる遺体もあった。彼女はライラのいるゆりかごを包み込んで固まっていました。

ライラを発見したのは爆撃を受けてから5日後でした。ひどい脱水症状でしたが病院で治療を受けて健康を取り戻すことができました。ライラはリオリトンで発見された最後の生存者で、医者はそれを奇跡だと言いました。

ヘンリーはその後も戦争中ずっと飛行機を操縦できていたので、自分は乗り切ったのだと思っていました。しかし、戦争が終わるとヘンリーは操縦席に座れなくなっていました。医者は頭のどこかを故障したのだと言い、それからヘンリーは激しい動悸を感じて、高い建物にも登れなくなってしまいました。

ローゼンは自分がリオリトン出身だから憎んでいるのか聞くと、ヘンリーは素直にそれを認めます。罪のない姉が死んで、罪のあるローゼンが生きているから。ローゼンもそれを否定するつもりはありませんでした。

憎しみは愛と同じくらい大切な人生の軸です。人は誰かを好きなのと同じように、誰かを憎んでこそ生きていけるから。だから、人には英雄と魔女が必要でした。コインのように、英雄と魔女は一体になっている。その魔女役として選ばれたのがローゼンでした。

ヘンリーはいままでローゼンにしてきた非礼を詫びました。ローゼンを汚いといって倒しても手を貸さなかったことや、船の上で肉を持って来て怖い場面を見せたことを。肉の件はローゼンはてっきりイアンの仕業だと思っていましたが、イアンにはそんなことを思いつけないとヘンリーが言います。

「ライラを助けてくれてありがとう、ローゼン・ウォーカー」

ヘンリーの蚊の鳴くような礼に対して、ローゼンは口先だけの感謝ではなく融通をきかせてみてと要求しました。ローゼンがヘンリーに自分の望みを囁いたとき、浴室の扉が開いてイアンが入ってきました。

「何をしているんだ?」

イアンの冷たい声にヘンリーはなんとか説明をしようとするけれど、うまく言葉にできず、そのままイアンによって浴室を追い出されました。

イアンは「ちょっと出てきてくれ」と言ってローゼンを湯船からすくい上げます。ローゼンはイアンに渡されるタオルを身にまとい、椅子に座りました。これはチャンスなのかな?今はそういう雰囲気じゃない?と不純なことを考えるローゼンに対して、イアンはローゼンを見たり天井を見たり、イライラしながら髪を乱し、ヘンリーがローゼンの望まない事をしたのか聞きました。

イアンは、自分はヘンリーの上司なのでモンテ島に行くまで彼を近づけさせないようにもできると話します。自分の部下ではなく囚人であるローゼンを信じようとするイアンに驚きました。

「私はこの手の事件が大嫌いだ。戦争中ずっと見てきて、今考えただけでも吐き気がする」

「私は囚人で、ヘンリー・リービルはあんたの部下だよ」

「私にとって良い部下だからといって、お前にまでいい人だとは限らない」

仕方なくローゼンはヘンリーへの誤解を解くためにイアンに説明し、自分の目の前に腰を下ろして座るイアンを眺めました。

「あんたは確かに英雄だね」

ローゼンのような囚人を気遣える人間はまれです。空の上にいる人達は足元にいる虫のようなものには見向きもしないし、哀れみすら持たない。しかし、イアンは英雄でした。人を殺しても殺人者や虐殺者ではなく、英雄と呼ばれるだけの理由がある。イアンはローゼンの言葉に戸惑い、宙をさまよって、またローゼンを見ました。

「お前も私を英雄だと思うのか?」

「私もあんたのことが好きだった。みんなそうだったように、私にとってあんたはヒーローだったから。気持ち悪い?」
「……」
「声も、あんたの姿も。空からあんたの写真が映ったビラが落ちてきたら、きちんと拾って引き出しに入れておくくらい」
「写真を拾ったのか?」
「変なことじゃない。その時、リオリトンであんたと写真を集めていなかった女の子はいなかったから。私もその中の一人だっただけ」

イアンは立ち上がり、ローゼンに手を差し出す。ローゼンがその手を取ってもいいのか考えていると、「気分が悪いわけではない。戸惑ったんだ」とイアンが言いました。

「お前の言う通りだ。私たちは似ているところがあるかもしれない」

前にローゼンが話した時は、イアンの興味を引くために咄嗟に口を出た言葉だったので本心ではありませんでした。ローゼンはイアンがどういうつもりで言ってるいるのかわからず混乱します。

イアンはローゼンを抱えるとそのまま歩き出してしまう。イアンはもう乗務員もヘンリーも信用出来ないと言いました。ライラを救ったことによってこの船にはもうローゼンを警戒するのはイアンしかいくなってしまった。もしかしたら本当に魔女かもしれない。

「あんたはそれで私が怖いの?脱出すると思ってるから?」

「そうだ。私はお前が怖い」

私がその理由を尋ねる前に、彼は別の船室のドアを開けて、白いベッドに私を投げ捨てた。 私は柔らかい布団を引き寄せて身を覆い、彼の言葉をかみしめた。

これも偉い方の話し方かな?言葉をねじ曲げて私を攻撃しているのか。もしそうなら、彼は完全に失敗した。私は本当に彼が何を言っているのか全く理解できなかったから。

私たちは似ているところがあるかもしれない。私はお前が怖い。

イアン·コナーがなんで?鍵を持っているのは彼だった。 彼は看守、私は囚人。 恐れるべきなのは明らかに私なのに。

乗務員がそこに押し寄せ、ローゼンにドレスやネックレスを持ってきて着せつけました。ローゼンはあいた扉の向こうにいるイアンを見ます。タバコを吸って煙を噴き出しているイアンは彫刻のようにすらりとして真っ直ぐだったが、戦争英雄というにはその後ろ姿があまりにも空虚で虚しく見えました。

ここから時間が少し戻ります。

ローゼンが浴室に向かった後、イアンは不安でしたがその理由が自分でもわかりませんでした。

ローゼンが逃げるからなのかと考えてみても、彼女には手錠をつけていたし、乗務員を5人もつけているので倒すことも、この船から逃げることも無理だと理解していました。何より、ローゼンは長く縛られていたせいで筋肉もなく、腕も皮と骨だけ。

イアンは自分の机の上に散らばった書類の中に紛れたスクラップブックを見ます。そこには新聞から切り取られたローゼンの記事が集められていました。それは暇つぶしの趣味のはずでした。

戦争が終わった時、イアンは帝国から地位が整うまで待っているように言われていました。ヘンリーの言う「輝く道」。それがイアンを待っていたのです。

しかし、邸宅で過ごす間、使用人たちが動き回る音を聞いていても、イアンはずっと静寂を感じていました。墜落して黒い水に飲み込まれる悪夢を何度も見て目が覚める。砲撃は?轟音は?エンジンの音は?墜落したならここはどこ?

イアンは自分が壊れてしまったことを自覚したけど、ヘンリーのように医者に見せることも、誰かに話すことも出来なかった。イアン・コナーは壊れてはいけない勝利の象徴だったから。

眠れない夜を過ごすのに、イアンは複数の新聞を取り寄せて記事を読みました。そこにはリオリトンの記事も載っていたけれど、イアンの選択によって爆撃されたなんてことは書かれていませんでした。かわりにローゼンの名前が載っているのを見て、帝国が民衆に対して魔女をつくりあげたことをイアンは理解しました。

帝国は、自分たちが作り上げた英雄に対する不満が高まると、それが帝国への不満にも繋がることを危惧していたのでしょうね。だからこそ、民衆の不満の注ぎ先を探していて、ローゼンが「善良な医者の夫を無惨に殺した魔女」として選ばれてしまいました。

ローゼンは脱獄して運良くリオリトンを離れていたので生き延びただけでしたが、民衆の負の感情は全てローゼンに流れました。

イアンは新聞でローゼンの名前を目にする度に、新聞を閉じてタバコを吸いました。私がお前に罪を被せろと政府に言ったわけではないと自分に言い訳をしました。運が悪かっただけ。私も、お前も。それでもイアンは自分への嫌悪感が抑えられませんでした。

悪意を持って1人を殺した者と、やむを得ず1万5623人を殺した者。死後、地獄に行くなら2人ともそこへ落ちるはずで、より大きな罰を受けるのはどちらだろうか。なぜイアンは英雄で、ローゼンは邪悪な魔女なのだろうか。

イアンはローゼンに捕まって欲しくなかった。本来イアンに降りかかるべき非難がローゼンに集まってしまっていたから。だから、できるだけ遠くへ逃げて欲しかった。夫を殺した殺人者ではあったが、イアンにとってそれでもローゼンはイアンが生かしたリオリトンの民でした。

イアンはもう自分に燃料が残っていないことを自覚します。帝国への忠誠も、飛行機への想いも。ローゼンに対する好奇心も時期に消えると思っていました。そこへ、大臣からローゼンの移送命令が降ります。結局捕まってしまったのかとイアンは思いました。

リオリトンへの砲撃による負傷者は、死者1万5623人、負傷者1万2568人、行方不明者8000人余りでした。大きすぎる犠牲に、イアンは耐えきれなくなってしまったかもしれませんね。

スクラップブックを見ていたイアンのもとに、ライラやってきます。クマのぬいぐるみやおもちゃの中からローゼンへのプレゼントを選びたいのだと言います。

ローゼンにプレゼントを渡したいのだと主張するライラに、囚人は刑務所に持ち物を持っては行けないのでプレゼントをあげても無意味だと話しますが、それでも刑務所までなら持って行けるとライラは言います。

イアンはローゼンなら拳銃や救命艇の鍵の方が欲しがると思ったけれど、それをライラに伝えることは出来ないので、仕方なくくまのぬいぐるみを選びます。ライラはイアンにもプレゼントがあると言って、ローゼンから貰った幸運のコインを渡しました。ライラにはもう幸運が訪れたので、今幸運が必要なのはイアンだとライラは思っていました。

イアンはその怪しいコインをガラス瓶の中に入れます。ライラにヘンリーがローゼンの部屋の前で監視していることを教えますが、ライラは部屋の前には誰も居なかったと言いました。それを聞いて、イアンは最悪な想像をします。

ライラを助けたことによってヘンリーはローゼンへの敵意はもう消えている。そして、ローゼンは体を差し出すことによって過去に脱獄した経験を持っている。

イアンは早足で部屋に向かい、2人が裸でいないことを祈りつつも、考えれば考えるほど怒りが込み上げてきました。自分が腰につけている拳銃を触っていることを自覚したあたりで浴室のある部屋に到着します。イアンは怒りを鎮めるために一度落ち着きますが、自分がなぜこんなに怒っているのかわかりませんでした。

そうして浴室の扉を開けたらヘンリーと、シャワーカーテン一枚に隔てられたところにいる裸のローゼンがいるのだからイアンは相当頭にきていたのでしょうね。なぜ頭にきたのかはまだ無自覚のようですが…

5章 危険な引力

夕食の席は船長室の隣にある小さなホールで開かれました。エメラルド色のドレスを身に纏うローゼンを見て、ヘンリーはそれがローゼンだと気づくと、目を丸くして拍手しました。

「褒めてくれてありがとう」と言いながらも、ローゼンはヘンリーよりもイアンの反応が気になっていました。しかし、ローゼンがイアンの反応を確認する前に、ヘンリーが視界をさえぎって「エスコートする」と言いました。いつもの軍服ではなく正装しているヘンリーは紳士のようで、ローゼンが彼の手を取ろうとすると、それをイアンの腕がさえぎります。

「お前はローゼン・ハワーズから半径1メートル以内は立ち入り禁止だ、ヘンリー」

ヘンリーはライラを救った礼としてローゼンが食べたい料理をシェフに頼んだだけで、ローゼンを逃がすつもりは無いと主張しました。イアンがさらに弁解しようとしたところで、ライラとアレックスがやってきます。

食事の時くらい手錠を外せばいいのに、とアレックスは言った後、ヘンリーにローゼンの食事を手伝うよう命じました。それをイアンが「ヘンリーはダメです」と突っぱね、自分がローゼンの食事を手伝うというと、その言葉にローゼンはもちろんその場にいた多くの人が驚いて固まりました。

ローゼンは何を考えているか分からないイアンの顔を観察します。囚人にはたいした洞察力なんてないけれど、ローゼンはイアンの本音を知りたかった。

家でヒンドリーを待ちながら料理を作っていたとき、イアンの写真が空から落ちてくるとローゼンはすぐに飛び出した。そんな純真な日々に戻ったかのようだった。イアンはローゼンに危険な妄想を抱かせる。もしかしたら、ちょっとした幸運が伴えば、イアンがローゼンにチャンスを与えてくれるかもしれないと。

いつの間にかローゼンの手はイアンに握られていました。イアンはローゼンの手錠を掴んでいると思っていたようで、それが鎖ではなくローゼンの手だと理解すると言い訳を言いました。

「わざとではない」
「知ってる」
「本当に鎖を」
「知ってるって」
知っている。何の意味もないってこと。全部私の妄想で、錯覚に過ぎないということ。
『いつも守ります。絶対に危険はないでしょう』
そう、実は知っていた。それは不可能な約束だった。「絶対に」と断言出来る事実がこの世にいくつあるのか。

ローゼンは暗い部屋で1人泣いている時、イアンの写真で自分を慰めていました。自分勝手に作り出した幻想の中でイアンに片思いをしたのです。だから、実際のイアンの向き合うと余計な感情ばかり出てきてしまう。もしかしたら嘘に騙されてはいけないのはイアンではなくてローゼンの方かもしれない。

アレックスが手を叩くと料理が運ばれた。ローゼンが目の前の食事に手を伸ばそうとすると、ヘンリーがまだ食事が開始されていないことを指摘します。上流階級のマナーを知らないローゼンは、せっかく自分が綺麗な服を着ていても結局裏通りの人間であることを隠せなかったのが恥ずかしくなりました。そんなローゼンの口にイアンがスープをすくったスプーンを押し込みます。

「適当に食べなさい」

イアンはヘンリーに対して、腹に入れば同じだし、戦時中は君も素手で食べていただろうと指摘しました。ライラもヘンリーに「叔父さんは人を配慮することを学んで」と苦言を呈され、アレックスは「食事が終わったら会おう」とヘンリーを睨みつけました。ローゼンの味方をしてくれるこの状況が、ローゼンにとっては新鮮だった。

「あんたは食べないの?」

「私の食事は後でとる。気にしないで食べなさい」

イアンが運んだスプーンがローゼンの前歯や奥歯にあたり、痛みで顔をしかめるとイアンはさらに小さいスプーンに変えます。イアンの眉間は寄っているのにローゼンに食べさせる手つきは繊細でした。最初はイアンの運ぶものを食べていたローゼンは「野菜ばかりじゃなくて肉もちょうだい」と図々しく要求しはじめ、ガツガツ食べるローゼンに、イアンは「胃もたれするからゆっくり食べなさい」と言いました。

イアンはローゼンがなぜライラに対して応急処置できたのか尋ねます。食事の間まで取り調べのようなことをされたくなかったけれど、イアンは美味しそうな肉の蒸し物を人質にしていたので、ローゼンは仕方なく「夫が医者だったから私もいくつか習った」と答えます。

それはほとんどの人が納得できる答えだった。もちろんヒンドリーは医者だったが、彼は本物の魔女を妻にしていた。魔女はローゼンではなく、エミリーでした。

アレックスがローゼンに年齢を尋ね、現在は25歳で15歳の時に結婚したことを話します。ローゼンは孤児院の出身で、孤児院にいる女の子は早く結婚することが多く、12歳で結婚する子もいました。ヘンリーがローゼンの夫は当時いくつだったのかと聞くので、正確には知らないが20歳後半だと答えます。驚愕するヘンリーに「関係ないでしょ。どうせ死んだじゃない」とにっこり笑いました。

ここは漫画だと年齢が違っているようですね。漫画だとローゼンが結婚したのは14歳で、現在24歳になっていました。

ライラもいるので食事をしなさいとイアンがヘンリーとローゼンに声をかけるけど、ライラは自分は新聞を読んで知っていると主張します。ローゼンはやっていないかもしれないと話すライラに対して、イアンは十分な証拠があるし、ローゼンの話すことは嘘だと言いました。イアンなりに優しい声を出していたけれど、長年軍人として生きてきたイアンの話し方は硬かった。結局ライラはアレックスに駆け寄って抱きつきました。

ローゼンはライラを困らせたくなくてあえて口を挟まなかったけど、食卓の下でイアンの足の脛を蹴ります。

「静かに食べるから子供を責めるのはやめて」

「コインはどうしてライラにあげたんだ?」

イアンはローゼンがライラに渡した幸運のコインの話を持ち出して、ローゼンが嘘つきだと示したかったようだった。

ローゼンはライラを宥め、次に運ばれた食事たちを見て、何が食べたいか聞くイアンに「マエリアの実」と答えます。イアンが差し出すスプーンに乗るマエリアの実が唇に近づくと背筋に鳥肌が立った。口の中に入れて酸っぱい果肉を噛むと、刃を噛むような痛みが広がり、歯茎から血がにじみ出ました。吐き気に耐えてローゼンは飲み込み、心の中で3つ数えると、腕に蕁麻疹が広がり、胸が締め付けられ、ローゼンは口の中に溜まった血を吐き出した。

3人が真っ白な顔になるのを見て、ローゼンは心の中で成功を喜びました。これで牢獄へ引きずり込めない。ローゼンには時間が必要でした。勝手に希望を抱いて待っても、望むものは得られない。だからローゼンは自分を傷つけても自分を救うために動かなくてはいけなかった。

「ハワーズ!」

イアンがどんな表情をしているか見えなかったけれど、どうかイアンが一瞬だけでも油断してくれることを願いました。視界が暗くなり、椅子から崩れ落ちたが、床にぶつかる衝撃はなかった。ぼんやりとした意識の中で、誰かの硬い腕がローゼンを抱きしめていた。遠くで、「ローゼン!」と呼ぶ声が聞こえたけれど、幻聴だと思いました。イアンがローゼンの名前をそんな切実な声で呼ぶわけないから。

マエリアの実は帝国の西側で取れる果物です。すぐに熟してしまうので生果は原産地でしか食べれませんが、砂糖漬けであれば保存が効くので帝国のどこでも食べれます。しかし、安価な果物ではなかったので、庶民の主食ではなく、ローゼンが一度も食べたことがないと主張しても違和感のないものでした。そのマエリアの実のアレルギーだったローゼンはそれを利用し、ヘンリーにマエリアの実を食事に出すよう要求していました。

イアンは食事に毒が入っていたのかと考えましたが、医師はローゼンの体質のせいだと説明しました。特定の食べ物を食べるとそういった症状が出る人がいる。ローゼンはまさにそれで、知らなかったなら事故で、故意なら自殺未遂になると話します。モンテ島に行くより死を選ぶ囚人もいるので、ありふれた事だとも。

ローゼンは治療を受けて死は免れましたが、目を覚まさなかった。意識が戻らないのは栄養失調で元々体が弱っている状態だからです。

医師の話を聞いていたライラが、体が弱っているローゼンを囚人用の部屋に戻したら病気になって死んでしまうかも、と心配しました。ライラの話を聞いて、イアンは自分の船室にローゼンを運ぶよう乗組員に命じます。

ここのシーンで、

ライラの言葉に同意している自らが呆れた。 その理由が、ローゼン・ハワーズを無事に生かしてモンテ島に連れて行くためではないということに、さらに呆れている。

とあるので、ローゼンに対する感情はまだ掴めていないものの、イアンは単純にローゼンを死なせなくなかったということですね。

アレックスは料理に毒を盛るという卑怯なことをする人間が自分の船に乗っていることを怒り、ヘンリーはまたショックを受け、冷静に話を聞けるのがイアンだけだったので、医師はイアンを選びましたが、そのイアンも全く冷静ではなかったことを後で医師は理解しました。

1巻中編を読んだ感想

ローゼンが罪を犯したことを、帝国は利用することで民衆が恨むべき魔女という存在を作り上げたんですよね…。英雄を作り上げることと言い、とても心理戦が得意な国だと思います。

本来であったらローゼンの身辺調査を事細かくして、ヒンドリーがどういう人間だったのか、動機は何だったのかとかを調べて、擁護につく人もいたのでしょうが、帝国によってそれらが全て阻止されていたのかもしれません…。ローゼン早く幸せになってほしい。

「永遠なる君の嘘」韓国の原作小説ネタバレ感想 |1巻・後編永遠なる君の嘘(영원한 너의 거짓말)の韓国の原作小説1巻(後編)のネタバレ感想です。 ※2022.12.20 記事の文章が長すぎ...
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いり
異性愛・同性愛に関係なく読みふけるうちに気づいたら国内だけではなく韓国や中国作品にまで手を出すようになっていました。カップルは世界を救う。ハッピーエンド大好きなのでそういった作品を紹介しています。

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